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 ―― 迷う心とタバコ味の……(13)

「直くん、身体大丈夫?」 俯いたままの俺の顔を、透さんは心配そうに覗き込む。 「え?」  最初は、何のことか分からなかったんだけど……。 「…… その、昨夜は無理させちゃったから、疲れてない?」 「あ……」  言われて、昨夜の事が蘇って…… それだけで身体が熱くなってしまう俺は絶対おかしい。  ―― 昨夜……。  玄関で、最後までやっちゃいそうな勢いの透さんを、なんとか宥めて寝室に行って……。  なんだか、こないだよりも透さんが激しくて、一回戦が終わった後も、お互いにまだ熱が冷めなくて、そのまま抜かずに2回戦……。  もう、ヘロヘロだったのに、一緒にシャワーしようって事になって、お風呂で透さんが、「中のを掻き出さないと…」って、言うから……。  そしたら、掻き出してもらってるだけなのに、俺がまた疼いてきてしまって……。  ―― あぁ…もう、恥ずかしい! 「昨夜の透さん、激しかった……」  思い出しながら、つい、ポツリと呟いてしまった俺に、透さんは苦笑いしながら、「ごめんね……」と、謝って、言葉を続けた。 「言い訳するとね、その……、こないだ直くんが起きる前に仕事に行かないといけなかったから……、メモに俺の携帯の電話番号を書いておいたんだけど……」 「あ……」  そうだった……。 俺、あの電話番号を控えなかった。 「だから、連絡くるまで待とうと思ってたんだけど、数日しか経ってないのに、連絡が来ないのが寂しくて不安だったりしてね」  透さんは、そう言いながら照れたように頭を掻く。 「もしかしたら、直くんは迷惑に思ってるのかもと、考えたんだけど、我慢できなくてバイト先に逢いに行っちゃった」  ―― 馬鹿でしょ?…と言いながら、透さんは長い睫毛を伏せた。 心なしか、顔が赤い。 「…… 食事に誘ったら、直くんがOKしてくれて、凄く嬉しかったんだよ……。 でも、本当は早く二人きりになりたくてね。」  と、そこまで言い終わると、透さんは、自嘲するように笑った。 「すみません、俺…… あの時、番号を控えるの忘れてしまって……」  それは、咄嗟についた嘘。 わざと控えなかったんだけど……。  まさか、透さんがそんなに俺の事を考えてくれていたなんてと思うと、嬉しいのと、申し訳ない気持ちで、つい嘘をついてしまった。 「でも、またこうして逢えて良かった」  いつもの優しい笑顔でそう言われると、今まで曖昧な関係に悩んでいた事も、忘れてしまう。  ―― やっぱり俺…… 透さんのこと……。