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第3話 生い立ち

 弓月は物心ついた時に施設に入れられ、高校を卒業するまでずっと施設で育った子だった。  大学は奨学金と高校の時にバイトで貯めたお金を使って入学したらしい。  今の生活費は掛け持ちをしているバイトでどうにかやりくりしているらしく、空いた時間で勉強をしているのだとはるとは言った。  ここに来てる日は、週一の貴重な休みを使って来てくれているらしく、それを聞いた清十郎は胸が痛くなり、弓月に対する愛おしさが増した。  でも、この気持ちは息子に対する気持ちとは何処か違う。  その違いは未だ解明されない。 「清十郎さん?」  でも、名前を呼ばれる度、その口元を見てしまう。  アヒルのような可愛い口元が清十郎の何かを擽ぐる。  息子の友達に何を思っているのやら……。そんな思考、消さなければ。 「清十郎さん……あの……僕……」 「ん? どうした?」  ハッとなり、現実に戻った清十郎は、食器を手早く洗ってすぐに弓月に渡す。  すると、弓月がその食器を受け取らず、顔を真っ赤に染めて清十郎にこう言うのだった。 「僕……清十郎さんが好きです」  と、顔を赤く染めて---。

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