7 / 64

そしてふたたび

週に2回くらい、僕は駐車場で三田さんと挨拶するようになった。 三田さんはいつもスーツを着ているから、たぶん仕事帰りなんだろう。 「今日も暑かったですね。」 「お疲れ様です。」 「いってらっしゃい。」 「どうも。」 そんなあたりさわりのない言葉を交換する、ただそれだけだ。 そういえば僕の名前を三田さんは知らないだろう、聞かれてもいない。 僕は「302」 番号・・・囚人みたいだよね、まあ実際がんじがらめだから同じようなものだ。 僕の休みは月曜日。月曜の明け方に家にもどり、次に出かけるのは火曜日の夜。 この月曜の夜をもてあます。 寝てしまうと火曜の勤務がきつくなるから、何かしらして起きていなくちゃいけない。 ケーブルの番組もリピート放送が多いから飽きる。今週はDVDでも見ようか。 そうだな、飲み物を買ってDVDをみることにしよう。 日曜の勤務を終えてレンタルショップに立ち寄る。さて何を見るべきか… アクションものは嫌いじゃないけれど、あえてみるほど好きでもない。 恋愛ものもしっくりこない。海外ドラマ?ケーブルでそのうち放映される。 結局いつものパターンに落ち着く。 まったく知らない作品ではなくて、前に見たことのあるものを借りる僕。 できれば知らない映画は映画館でみたい。しばらくいってないな… ふと思いついた。M・ウィンターボトムにしよう。 店内を歩き回ってみつけたのは「I WANT YOU」「CODE46」の2本だけ。 途中T・ギリアムの「未来世紀ブラジル」があったけど、絶望しながら聞く「ブラジル」の音楽を思い出したら気が滅入ったのでやめた。 隣のマックスバリューでワインを買って車に乗る。 本当に誰とも話をしない、僕の週末がやってくる。 月曜0:00すぎ、しぼるように一人で涙を流していた。 コステロの歌声が頭の中をグルグルまわる。 「I WANT YOU」は前に見た時よりも僕の胸を揺さぶって心臓を握りつぶしたから。 感情がざわめきすぎて何だかよくわからなくなって、どうにもできなくなって、ただただ…泣いてた。 ワインとの組み合わせのせいも、あるかな… まだ夜は長いのに疲れてしまった。「CODE46」をみることができるだろうか。 T・ロビンスの「I LOVE YOU」に耐えられるかな S・モートンの「I MISS YOU」に正気でいられるかな とりあえず顔をあらってソファに横になる。 ウィンターボトムが監督した映画を見ると、なんでいつも心臓が痛くなるのだろう。 それがわかっているのに、僕はこの人の映画が好きだ。 あの人は…好みじゃないって言ったっけ。変な映画だなって、そう言った。 色々なことを忘れていくのに、俳優の名前がでてこなくなったりするのに 忘れてしまえないものがある。選べたらいいのに・・・忘れるか、留めるか 忘れるという選択をするだろうか? できるだろうか? 忘れたいと思っているのだろうか? ガチャ、ガチャ 内面に沈んでいた僕は音で現実に戻った。 ガチャ、ガチャ 止まっては思い出したように鳴る鍵穴。 今度は迷わず玄関に向かった。

ともだちにシェアしよう!