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世話を焼く 1
ドアミラーから覗くけれど姿は見えない。しゃがんで丸まっているなら映るはずもないしね。
今度はドアチェーンをかける代わりに、ドアノブをひねる。
やはりそこには座り込んだ三田さんが居た。
「あの…三田さん?また階、間違ってますよ。」
スーツが汚れてしまうよ、そんなところに座っていたら
「ねえ、三田さん。」
肩に手をおくとスッキリした目が開かれる。
「あ、きみか。俺、また間違ったのか?」
「ええ、部屋まで送りますよ。」
「あのさ、水とか、茶とか、ゴクゴク飲めるものある?」
麦茶がある。あるけど、座っていたら汚くなるよ。スーツがもったいない。
「とりあえず中に。」
靴を脱がせて、腕を肩にまわして引っ張り上げる。僕より少し大きいくらいでよかった。
じゃないと持ちあがらない。
リビングにいくよりドアを開ければすぐ寝室だ。
そのままドサリとベッドに三田さんを落として麦茶をコップに注ぐ。
酔いすぎなのか眠いのか、両方か・・・
「三田さん麦茶です。」
上半身を起こしてコップを口につける。
三田さんはまた目を開けていきなりコップを両手で掴むと、ごくごく飲みほした。子供みたいだ、この人。
そしてコップを握ったままドサリと仰向けになって、また目が閉じられた。
「ちょっと、三田さん、あの、三田さん?」
揺するたびに、「ん」とか「あぁ」とか返事が返ってくるけれど起きるつもりはまったくないらしい。ふと思い当たる。三田さんは誰かと一緒に住んでいるかもしれない。
このマンションは2DK。僕は何もないガランとした部屋が好きなので一人で暮らすには少し広い部屋をいつも選んでしまう。ここは夫婦やカップル、子供のいる家族がほとんどで、一人で住んでいる人間はほとんどいないと不動産屋が言っていた。
指に指輪はない。
この人いくつくらいなんだろう、僕と同じ?いや、たぶん少し上だろう。
とにかくここにいても仕方がないと思いついて玄関に向かった。
同居人に知らせないと心配するだろう。
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