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世話を焼く 2
一つ上の階の「402」の前に立つ。確かにまったく同じだ。
出張の多い仕事・・・だった。全国チェーンのホテルはまったく同じ作りの外観と部屋。
全国の同じホテルに随分泊った。フロントで部屋番号を何度も間違った。
『おい、それは一つ前の会場の部屋番号だろう?』 あの人はそう言って笑ったっけ…。
ドアの横の窓から灯りは見えない。でも寝ているだけかもしれないし。
ドアチャイムを鳴らす。
何かが動く気配もなければ、電気がつく様子もない。
念のため3回鳴らしてみたけれど、誰も居ないみたいだ。
結局下の階に戻るとベッドの上に横たわり、三田さんは完全に熟睡していた。
帰れとは言えないな、というかここに寝かせてしまったのは僕なわけだし。
スーツが…
母親は父のスーツをいつも丁寧にかけていた。楽しそうにネクタイやシャツを選んでいたものだ。僕はそれを手伝うのが好きで父に贈るのはいつもネクタイ。そして大人になった僕への贈り物もネクタイ。
翌朝ヨレヨレになるスーツを想い浮かべると悲しい気持ちになる。
今スーツを着ることがないから、よけいにそう感じた。
僕は三田さんのベルトをはずして下を脱がせる。
靴下だけの足はとてもマヌケだ。いつみても可笑しい。
靴下を脱がせてネクタイを外す。シャツのボタンをはずして上半身を起こしてシャツと上着を一緒に脱がせた。
たぶん、このままだと確実に二日酔いだろう。引き出しをあけて胃薬とウコンを出して麦茶を用意した。水の方がいいのかもしれないけど、ぬるい水道水しかない。
「三田さん、少しだけ起きてください、麦茶です。」
少しだけ肩を揺すると、ゆるゆると目が開いた。
「もう少し飲んだ方がいい、これも一緒に。」
半ば強引に薬と麦茶を飲ませると三田さんは何か呟いた。何をいっているのかわからなかったけれど。
タオルケットをお腹にだけ乗せて寝室をでた。
誰かの世話を焼いたのは久しぶり
こんなふうにしてもらっていた自分
どっちも随分遠い時間の出来事だ。
さっきまで脱力していたけれど何だか少し意欲が湧いてきたのでDVDをセットする。
酸性雨と有害な紫外線のために夜に行動する未来の人達のお話 「CODE46」
僕と同じく夜に生きる彼らの世界に、自分を埋もれさせよう・・・
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