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ガチャ・・・ガチャ

ガチャ、ガチャ 突然 ドアのカギがあいて そこには女性がいた 僕の心臓が口までせりあがる デジャブ… 無意識に自分の首に手が伸びる。 「おい、静香!来るなら電話ぐらいできるだろ?」 「予定より、3日早く仕事が終わったから」 「いや、だからさ。電話くらいできるだろって話」 現実の時間が動きだして、僕は少しほっとする 合鍵を持っているような彼女がいたんだね、三田さん。 僕はね・・・以前と同じことを繰り返す力も気力もないんだ。 もうこれで君の視線の意味を考えずに済む。まだ前に進めていない自分に悩む必要もない 「あ、僕は帰るね」 「いや、いいって」 「久しぶりに会うんでしょ?いいわけがない」 「え・・と?」 彼女の目が僕に向けられる。警戒している猫のような目 「この下の部屋のものです。ひょんなことで三田さんと知り合いになりました」 「俺が酔って郁の部屋と間違ったんだ」 「いく・・・?」 「僕、沢田郁斗といいます」 「静香です」 彼女は下の名前しか言わなかった。いいのに、そんな顔しなくても。 僕は人の物の横取りは、もうしないよ。・・・できないんだ 「じゃあ、三田さん。・・・静香さん失礼します」 何事もない、だって何もないんだし、というフリをしながら部屋を出る 静香さんの目が頭をかすめる。あんな顔をされるってことは、僕らの何かが透けていたんだろうか 確かに、今日僕らは今までよりも話しをした、はじめて 良かったんだ、これで 僕はまた同じ過ちを繰り返すところだったのかもしれないから 久しぶりに、目が覚めないことを祈りながら眠りについた

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