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週末
少しだけ明るい色のついた僕の日常は、また暗いトーンに覆われた時間の繰り返しになった。
一週間と少し、三田さんからの電話はない。
僕の部屋に遊びに来ることも、酔って部屋を間違えることすらなかった。
そして僕は可笑しくなる。・・・たったの1週間だ。絶望するほどの時間でもない
…わかっている、僕はあの屈託のない笑顔が見たい
でもこれ以上考えるのはやめよう。気がついてしまわない事のほうがいい場合もある
仕事にいこう、沢山の人と言葉を交わすのに、誰とも話をしない、あそこへ行こう
僕はうまくやれる。誰でもない声だけの自分になる
土曜日、いつものようにDVDとワインを手に車を降りた。
誰とも話さない週末の過ごし方だ
「郁」
振り向かなくてもわかる。2週間までいかないけれど、そのくらい聞いていなかった声
少しだけ鼓動が早まる
僕はゆっくり声の方に顔を向ける
「・・・ひさしぶり」
自分のどこかがグラっと揺れる。だめだ、踏み堪えろ!気がつくな!何も考えるな!
「郁、休みだろ?一緒に飲もうぜ」
スーパーの白い袋を心もち持ち上げて少し心配そうな顔が薄明かりに映る
「・・・うん、ワインを買ったんだ。DVDも借りてきた。一緒に見る?好きかどうかはわからないけど」
ワインの入ったビニールを少しだけ持ち上げた
少し照れくさそうな、僕の好きな笑顔がそこにある
ただそれだけなのに、何だか少し泣きそうになる
自分がどんな顔をしているのかわからなくなって、急いで向きを変えて玄関に向かった
何品かの簡単なツマミを喜んで食べる三田さんの顔をみるのは楽しかった
そうだよ、いいんだこれで・・・。これだけで充分じゃないか
僕はビールを1缶のんで、ワインに切り替えた
三田さんは3缶ビールをあけて、ズブロッカをとりだし、ロックで飲みだす
「三田さん。そんなピッチで飲んだらすぐ酔うよ?」
「うん、わかってる。でも俺さ、今日酔いたいんだわ」
「そう。まあ部屋を間違ったり、ドアの前で寝る心配もないしね」
「つぶれたら麦茶飲ませてよ。俺、着替えてくる」
三田さんの背中を見ながら、麦茶のパックを容器にいれて冷蔵庫に突っ込む
・・いつも僕は背中を見送ってきた。
僕はどうすべきなのだろう?どうしたいのだろう?
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