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社長の要求にウンザリしながら、あの人と僕はキンコーズにいる 僕らほど全国の色々なキンコーズに出入りしている人間もいないだろう。 原稿を打って資料をつくり、にわか作業でPOPを造る。互いに無言のまま、キーボードの叩く音だけが響く 0:00をすぎた時間にデザイン細部の確認なんかしない。 互いに作業をして、早々にきりあげる。全体のフォルムなんか・・・確認しなくても僕らはわかる ホテルへの道を急ぐ。早く帰って寝ないと、明日の朝も早い。 作業したものを会場にいれて、手直ししなくてはいけない。 僕たちのすぐ横を大型トラックが走りさる 一瞬身をすくめた僕をみた貴方は、車道側に場所を変える 「寒いだろ」 僕の目線より上にある、温かい目を見ようと思ったのに、やさしく唇がふさがれる 思わず握った拳がてのひらに包まれる 「あ・・・」 その先に、僕の手は、あの人の手に包まれたままコートのポケットにいれられる あなたは何も言わない・・・ 僕はなにも言えない・・・ ポケットの中でギュット握られる力強さに嬉しくなる僕 後ろからくる車からポケットが見えないように猫背になる貴方 心が疼く 渦が・・・まく 僕は何も言えない。。。言う言葉もないし、名前すら呼べない 「沢田・・・」 脳天につきささる 好きとか愛してるとか言わないかわりに、あなたはこんなことをする 「早く…帰りましょう。そして…」 ぎゅっと握られる手 僕の名前を呼ぶ声と、握られる手 愛してると一緒の、あの人の言葉… 目を覚ましたら、泣いていることに気がついた 夢をみた・・・とても懐かしい自分の想い出 幸せだった僕 『郁も…しっかりして』 しっかりって、どういう意味だろう こんな・・・夢で昔を思い出す、これのことか 『しっかりして・・ケリをつけて』 あの人の処においてきたままの自分を取り戻すってことだろうか 逃げてしまった自分と、本当に言いたかったことを、ちゃんと言うこと? 手紙じゃ、ダメだったことはとうにわかっていたんだ そうだね、ちゃんとしないとね・・・ こんなかつての自分を夢にみていても解決しない

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