29 / 64

予期せぬお客さん

出しかけた手をひっこめる 三田さんが僕を抱きしめていなくなってから、何度も電話に手をのばしては引っ込める ・・・この繰り返しだ 『少し時間がかかると思うけど・・・』 確かにそう言った。そしてそれは少しじゃないはずだ ある程度の時間・・・だと思えた また僕は一人で過ごす時間だけになった ひとつ上にいる三田さんは姿を見せない 家を出て帰宅して・・・眠りに落ちるまで、心のどこかで待っている自分をもてあましていた。 抱きしめられた腕を思い出す 相手の背中に腕を回すことすらできなかった自分を思い知る そうやって毎日がすぎ、DVDとワインと過ごす休日がめぐって・・・また時間が流れる ピンポーン ピンポーン 僕はインターフォンの音で目が覚めた 転げるようにベットからでて玄関にむかって足を速める。 三田さんだ・・・絶対だ。 ドアスコープを覗いて相手を確かめることもせず勢いよくドアをあけた そこには静香さんが・・・立っていた 希望と期待は記憶と同じ光景に打ちのめされて、時間を遡る ほほ笑みながらドアを開けたのに、そこには女性が立っていて 投げつけられる視線の冷たさに動けなくなった自分が甦る 「敦いるんでしょ!」 僕の脇を通りぬけ声とともに背後に消えていく姿を意識しながら、僕は懸命に「今」にしがみついていた 「いきなりで申し訳ないと思ったんだけど、ここしか思いつかなかったの。それで・・・敦はどこにいるの?」 背後から聞こえた声に向かって、僕はようやく視線を向ける そこには人の部屋にずかずか上がりこんだくせに、やけに心配そうな顔をした静香さんがいた

ともだちにシェアしよう!