37 / 64
後悔と・・・その先
「いつ帰るんだ?」
「まだ、決めていなくて。あとはちゃんとサチに逢って謝らないと。
心配をかけたし、今となってはサチが唯一の家族ですから」
「そうか」
このまま腕の中に溺れてしまってもよかったし、それを望む自分も存在していた。
でも僕は気がついてしまった
もう一度最初から始めることはできない。
写真をなぞったように、二人の空白を埋められたとしても決して消えない事実と過去がある。
その現実はとても重いから・・・
過去の二人と今の僕らを比べる続ける日々が前向きだとは思えなかった。
今度ははじっこじゃなく、真ん中を生きていきたい
店のドアをおそうとした僕の肩に手が置かれる
「…すまなかった。後悔というものが何かを・・・この歳で知った。」
少しだけ力がこもった右手とともに背後から声がする
「僕も同じです。こぼれおちたものは、掴めない・・・と知りました」
肩に置かれた手に左手を重ねる
「あの写真と同じです。僕にとってあなたは過去もこれからも大切な人であり続けます。
これから大事な人が現れても、あなたが消えてなくなることはありません。僕の一部です。
・・・あなたの中で僕も少しだけ存在させてくれますか?」
背後から大きな両手が僕を包む
これから生き続ける互いの存在を僕らは抱きしめ合う
心残りが消えていく、後悔と引き換えに
後悔を自覚して、互いが存在しない未来を得る
僕らはようやく一人に戻った
ともだちにシェアしよう!