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つかむ未来 1

「沢田Mg~、今日11時から打ちあわせだから。タウン誌にだすらしい」 「何を出すんですか?」 席に着く前にディレクターに呼ばれる。 「会社紹介と求人の合体した見開き特集らしい」 「僕の参加は必要ないと思いますけど?Dだけで充分事足りそうですよ?」 昼前にフロアから二人抜けるなんて、あり得ない。さばききれないだろう。 「『オフィスのオシメン』って掴みらしんだよ、このコーナー」 まったくわけがわからない・・・・。 「まあ、実際俺でいいかと思ったんだけど、CS部がオシメンなら沢田Mgだっていいはるの。女子の意見には逆らえないしさ~。 沢田Mgがほほ笑む写真がでたらレスポンスがいいはずだって譲らないんだよ」 わたされたのはコンビニで見かけるタウン雑誌だった。 付箋の頁を開くと、企業のPRや業務内容とともに求人要項が組み込まれた記事構成になっている。 どうやら「オシメン」とおぼしき人間がオフィスを紹介する導入らしい。 これが僕の役目? 「五十嵐Dでいいじゃないですか、僕である必要がまったくないと思うし。 それに二人も抜けたらきつくないですか?」 「俺もそう思ったんだけど、女子目線では断然「沢田Mg!」っていうわけだよCS部が。 普段客のことばっか考えてるセクションがそういうなら俺逆らえないし。 おまけに13:00までは古田トレーナーが現場はいるって、サポートで。 従うしかないの、諦めな。 んで11:00ね、打ちあわせ時間。時間になったら会議室にきて」 そういうことならしょうがない。それが組織の一部というものだ。 溜息ひとつついて気持ちを切り替える。 これから鳴りだす電話と対峙して僕の役割を果たそう。 それにしても「オシメン」・・・もう少しましなタイトルはなかったんだろうか

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