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つかむ未来 3
「それじゃ、あとスケジュールとか細かいことだけ確認してくれる?さすがにフロアに戻るよ。」
五十嵐さんが席を立ちながら言うから僕はあわてた。
「いや、僕が戻ります!」
「それじゃ、あと宜しくお願いします。細かいことは後で沢田と確認しますんで」
「かしこまりました」
会議室を出て行こうとするディレクターの腕をつかむ。
「11時半回っただろ?たぶんいつものお客さんがかけてくる時間。」
「あ・・あ。ですね・・・」
暇なのか寂しいのか、たいした内容でもないのに名指しで電話をしてくる人がいるのだ。
たいてい決まった相手が電話口にでないと納得しない。
「打ちあわせ終わったら昼メシ食ってきちゃってよ。さっさと古田トレーナーもどさないと、フロアの空気が厳しくってかなわないからさ。」
じゃあ、よろしく。と片手をあげてディレクターは会議室を後にした。
「あまり打ちあわせを長引かせられないので、スケジュールの委細はメールをいただければけっこうです。
今はこれといって質問もないですが、もし何か思いついたら連絡するかもしれません。」
僕は椅子に座らず立ったままで三田さんに声をかけた。
「あ~~もう。ちょっとここ座ってよ。そして俺の話を聞いて、郁」
両手で顔を覆い、椅子の背もたれに身を預けている。
椅子に埋もれたように見える三田さんはようやく僕を郁と呼んだ・・・。
「5分でいいから・・・」
僕はだまって椅子に座った。
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