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雨の先・・・そして 8
「マスターごめんね急に。でも座敷あいててよかった~」
「いえいえ、こちらこそだよ。ドタキャンになっちゃって、今更予約も入んないし困ってたところで。」
「え?金曜の夜は混んでるんじゃないの?」
「逆なんだよね、うちの場合。週末は予約なしじゃ入れないって思うみたいでさ、お客さんたち。だからキャンセルになると厳しいんだよ。三田さんだって、「ダメモトなんだけど~」って電話くれたじゃない。」
「繁盛店ならではの悩みだね、マスター。」
結局入る店もない俺達3人は、観光客目当ての店に行くなという地元住民の意見を聞くことになり、三田が電話してくれた店に行くことになった。
三田も一緒に・・・。さっき山田が道を聞いていた人も一緒に・・・。
いきなりの展開に面食らったものの、あまりに想定外のことが起こるとショック状態になるらしい。
俺は何が起こっているかよく理解できないまま佐伯や山田が矢継ぎ早に三田に質問を浴びせているのを見ていた。
そして・・・色の白い、さっき郁と三田に呼ばれていた男性と目が合う。
『困りましたね。』
そんなふうに見えたのは、俺がそう感じていたからかもしれない。
店に向かう道すがら、なんとなく俺の隣に来た三田が言った。
「正巳ごめんな。ほんっと偶然なんだわ。みんなを店に連れて行って、ちょっとしたら俺抜けるから。
・・・ごめんな。」
『ごめんな・・・正巳。』
最後に聞いた言葉と再会の言葉が一緒って・・どういうことなんだよ。
お前はそんなに俺に負い目があるのか?
・・・いや、俺もだ、お互い様だ。
俺は何も言えなかった。
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