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雨の先・・・そして 12
「いらっしゃいませ、あ、どうも。カウンターにどうぞ。」
繁華街のビル。狭い階段を上った小さなバーに場所を移した。
「悪かったな、正巳。なんだかいろいろ・・・」
「もうゴメンはやめにしてくれないか?」
「・・・いや。だって・・・」
「・・・俺、前に進みたいんだよ・・・いいかげん。」
声なんか聞こえないのに「え?」という音が聞こえるような、そんな表情を浮かべる三田。
もう二度と会うこともない、かもしれない・・・ここは地元でもない。
そう思えば何をいったところで、この4年となんら変わりはない。
そう思えたとたんに、俺はすべてを吐き出して三田に浴びせたくなった。
「俺はお前のそばにいてずっと笑っていたかった。でも台無しになった。
俺は・・・ただあの時間が永遠に続けばいいと思っていて、それをバカみたいに信じていただけだ。
酔ったうえでのおふざけだろって佐伯がバカにするから、つい口が滑った。それは俺が悪かった。でもな、お前が台無しにした・・・のは間違いないだろ?違うか?」
いきなりまくしたてる俺を静かに見つめた後、三田は一口酒を含んでから口をひらいた。
「俺も時間がたったから、正巳の顔みて本心を話せそうな気がしてる。
でも当時は言えなかった。言ったら終わりだってわかっていたからさ。」
「本心ってなんだよ、聞いてないし。それで言ったら終わりって、言わないで終わってんじゃないか。俺ら。」
「・・・そうだな。始まりもしないのに終わりになった。これが現実。」
俺は頭に血がのぼる。始めたら何かが変わったのか?俺に選択の余地はあったのか?なかったのか?
「はじめようとしたのに、俺が台無しにしたって、言いたいのか?おい。」
テーブルの上で無意識に固く握ったこぶしがやさしくたたかれる。
トントン
俺は思わず三田の顔を見た。
「お前は受け入れられなかった、それだけの話だ。俺らの道は交わらなかった。それだけだよ。どっちが悪いもいいもないさ」
「じゃあ、なんで謝るんだよ!」
「お前が言うように・・・台無しにしてしまったからだろうな。
俺はあの時こぼれそうな想いを懸命に両手ですくい上げているような綱渡りでさ。
あの時だって、ただ寝顔を見たいと思っただけだった。でも男だしな、体が動いた。
で・・・思った通りの結果になった・・・・本心を言うまでもないな、実際。
だからお前が悪いわけじゃないよ。」
ずいぶんスラスラといえるものだ。俺はこの何年もずっとくすぶり続けていたのに。
受け入れられなかった・・たしかにそうかもしれない。
でも三田がいやなわけじゃなかったし、むしろ一緒にいて楽しかった。
・・・受け入れられなかった自分にイライラしているのか?
わからない・・・
『自分にどうにもできないなら相手にどうにかしてもらえよ。』
佐伯の言葉がよぎった。
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