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雨の先・・・そして 18

互いに飲み物をお代わりして、しばらく無言で壁を見ていた。 「俺さ、わかったよ、三田。」 俺が口をきかないと、絶対何もいいそうにないから三田に問いかける。 「なにが?」 「お前、沢田さんにべたぼれだし頭あがらないだろ。」 「否定しね~よ。敵わないからな・・・郁には。なんでもかんでも。」 「わかるよ、俺、あの人にキスされても殴らなかったと思う。」 「はああ?」 「勝手に涙でてきたけど、あの時もしキスされていても、俺・・・気持ち悪いとか全然思わなかったし、殴り倒すような気も起きなっただろうな。」 「はあああ?」 「だから、本当に俺たちは「しょうがない」ってことなんだろうな。 俺、さっきお前にキスされても前とおんなじように殴ったと思う。 やっぱり俺とお前は縁がないってことなんだな。」 ケラケラ笑う俺を最初怒ったように見ていた三田も、あまりに笑い続ける俺をみて笑うことにしたようだ。傍目にはただの酔って上機嫌な男二人にみえただろう。 「郁はやらね~からな、俺のだから。」 思わず吹き出す。 「そもそも、あの人、誰のもんでもないだろ。そんな感じがしたけどな。 でもなんか傍にいてほしい感じだな・・・」 「正巳、俺はそれが不安なんだ。どうも前に付き合ってた相手がさ。」 「ん?さっきの奥さんいたとかなんとか?」 「そう、それ。前にさ、本に挟まってた二人の写真みちゃったんだけど、そん時の郁は『あなたのものです』オーラをガンガンだしてて、おまけにその写真まだ捨ててないんだぜ、どう思う?」 「どう思うって、そりゃ・・・ちょっと気になるな・・・」 いつの間にか俺達は前と同じように酒を飲みながら話続けていた。 あの時と一緒、いつもの時間、いつもの二人、いつもの空気。 それを取り戻していたことに気がついたのは、どうやって帰ったのか記憶にないベッドの中で朝をむかえ、目に映る天井が白くて明るいと思えたときだった。 胃がひっくりかえりそうになっているけれど、それすらもありがたかった。 俺はもう雨の日に目覚めることもないし、不機嫌の渦に埋まることもないと知っているから。 この二日酔いはその証だ。 ・・・少し度がすぎたけれど

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