62 / 64
雨の先・・・そして 18
互いに飲み物をお代わりして、しばらく無言で壁を見ていた。
「俺さ、わかったよ、三田。」
俺が口をきかないと、絶対何もいいそうにないから三田に問いかける。
「なにが?」
「お前、沢田さんにべたぼれだし頭あがらないだろ。」
「否定しね~よ。敵わないからな・・・郁には。なんでもかんでも。」
「わかるよ、俺、あの人にキスされても殴らなかったと思う。」
「はああ?」
「勝手に涙でてきたけど、あの時もしキスされていても、俺・・・気持ち悪いとか全然思わなかったし、殴り倒すような気も起きなっただろうな。」
「はあああ?」
「だから、本当に俺たちは「しょうがない」ってことなんだろうな。
俺、さっきお前にキスされても前とおんなじように殴ったと思う。
やっぱり俺とお前は縁がないってことなんだな。」
ケラケラ笑う俺を最初怒ったように見ていた三田も、あまりに笑い続ける俺をみて笑うことにしたようだ。傍目にはただの酔って上機嫌な男二人にみえただろう。
「郁はやらね~からな、俺のだから。」
思わず吹き出す。
「そもそも、あの人、誰のもんでもないだろ。そんな感じがしたけどな。
でもなんか傍にいてほしい感じだな・・・」
「正巳、俺はそれが不安なんだ。どうも前に付き合ってた相手がさ。」
「ん?さっきの奥さんいたとかなんとか?」
「そう、それ。前にさ、本に挟まってた二人の写真みちゃったんだけど、そん時の郁は『あなたのものです』オーラをガンガンだしてて、おまけにその写真まだ捨ててないんだぜ、どう思う?」
「どう思うって、そりゃ・・・ちょっと気になるな・・・」
いつの間にか俺達は前と同じように酒を飲みながら話続けていた。
あの時と一緒、いつもの時間、いつもの二人、いつもの空気。
それを取り戻していたことに気がついたのは、どうやって帰ったのか記憶にないベッドの中で朝をむかえ、目に映る天井が白くて明るいと思えたときだった。
胃がひっくりかえりそうになっているけれど、それすらもありがたかった。
俺はもう雨の日に目覚めることもないし、不機嫌の渦に埋まることもないと知っているから。
この二日酔いはその証だ。
・・・少し度がすぎたけれど
ともだちにシェアしよう!