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第12話

「S駅でいいのか?」 「はい」  車に乗り、シートベルトを締めると吉良からペンと紙が渡された。 「それに連中のたまり場の地図と住所。名前も分かるぶんだけでいいから書け」  男は頷くと、記憶にある限りの情報を紙に書き始めた。  揺れる車内でなんとか書き上げると、無言のまま運転する吉良の横顔を見る。  吉良を巻き込んだ事と、この情報と薬をどう扱うのかに不安を覚え、声が掛けられなかった。  そんな男の視線を感じてか、吉良は「安心しろ」と声をかけた。 「何とかしてやる」  吉良がどういう人間かは知らない。それでも、吉良に任せておけば何とかなる。そんな風に思わせる安心感があった。  責任を押し付けるようで「頼みます」とは言えず「有難う御座います」と男は小さく呟いた。  S駅側にあるコインパーキングに車を止めると、吉良は男から受け取ったメモ用紙を乱暴にポケットに突っ込んだ。 「俺が一人で取ってくる。鍵を寄越せ」 「鍵は五番のロッカーの後ろの隙間に隠してある」 「分かった。お前はここで待っていろ」  そう言い付け、吉良は車を降り、駅へ歩きだす。  人ごみを縫うようにして目的のロッカーへ辿り着き、五番ロッカーの裏に手を伸ばせば硬質な感触があった。指先に僅かに触れるそれを必死に手繰り寄せようとするも、何かに引っかかっているのか僅かに動くだけで取る事が出来ない。  通行人の不審げな視線を浴びながら何とか引き寄せ、漸く鍵を手にした時には薄っすら汗を掻いていた。  鍵に付けられた番号札のロッカーを開き、黒い鞄を僅かに開けると白い粉の入った袋が見え、直ぐにファスナーを閉めるとそれを小脇に抱え、駐車場へ向かった。  車を離れていた時間はそう長くない。  鍵を取るのに手間取ったが、精々が十分かそこらだ。  だと言うのに、車に男はおらず、運転席側の窓ガラスが外から割られている事から、拉致は疑いようがなかった。 「ケツに火が付いている奴は目敏いな」  吉良は携帯を取り出すと、マル暴の原木にかけた。 「よぉ。俺のツレが拉致られた。今から言う場所の監視カメラを確認してくれ」  コインパーキングの住所を伝えると、状況を教えろと言う原木の声を無視して携帯を切った。

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