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第2話

 男を店に運び入れ、置きっぱなしの煙草を取りに戻ったが2カートンもの煙草は目敏い誰かに横取りされた後だった。  あぶく銭で手に入れたものと思えば諦めもつくが、面白くはない。 「何でこんなもん拾ってきちまったかね」  己の不条理な行動に溜息を零す。   吉良は悪人ではないが善人でもない。  進んで厄介事に首を突っ込む趣味もない。  だと言うのに、男を助けたのは『腐った臭い』がしなかったからだ。  性根の腐った人間はどれだけ取り繕っても腐臭がする。  悪党と多く接してこないと嗅ぎ分けられない異臭。  裏社会の人間を見て来た吉良だから分かる。  目の前の男は真っ当な人間だと。  どんな理由で暴力を受けたかは分からなくとも、十分過ぎる制裁は受けている。これ以上は傷つく必要はないと判断できた。  買い置きしていた最後の箱から煙草を取り出し、吹かしながら思う。 「面倒臭ぇ」

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