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第6話
店主である吉良を目当てとした女性客の殆どは露出度の高い服を、男性客は派手な服装をしている。そんな常連客で賑わう店内に、場違いなスーツ姿の男が入って来た。
一見して筋者に見える強面の男がカウンター席に着くと、吉良は男以外の客に席を外すように頼んだ。
「それで、俺に何をさせたいんだ?」
常に不機嫌そうな顔を更に不機嫌にした原木は、単刀直入に問うた。
「表に顔を腫らしたチンピラが居ただろ?」
「暗くて顔がどうだったかは分からねぇが、何か居たな」
原木の好物であるサーモンのカルパッチョと日本酒を置くと、僅かに表情が柔らかくなるが、眉間の皴もへの字口もそのままに吉良を伺い見る。
「国家権力を持って排除してくんねぇか?」
「今日は非番で警察手帳は持ってねぇよ」
「まる暴の人間だろ? 顔でなんとかいけるだろ?」
「バカか。チンピラ全員が俺の顔を知っている訳じゃねぇよ。大体、チンピラ相手なら幼馴染に頼んだ方が早いんじゃねぇか?」
「まあ、この辺一帯咲良 組の縄張りだからな、そこに乗り込んで来るって事は咲良組のもんの可能性が高いが、違ったら面倒臭ぇ事になるだろ? 第一、シロートの俺に顎で使われてたらあいつの面子が立たねぇし」
「俺はいいのかよ」
「お前は公僕だからいいんだよ。給料分、国民の為に働くもんだろ?」
「今は勤務外だ」
「だから奢るって言ってんじゃねぇか」
ふんと鼻を鳴らすと原木は冷酒を一気に煽った。
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