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第8話
何時も通りの時間に店を閉め、自宅である2階に上がると男の姿は消えていた。
外で騒ぎが起こった様子がない事から男は上手く脱出できたのだろう。
箪笥の引き出しを見れば、パチンコで儲けた金の一部は手付かずで入っていた。
男の所持品に財布は勿論、携帯電話もなかった。
無一文では逃げるのに困るだろうと、くれてやるつもりでわざと男の目の前でそこに金を入れておいたのだが。
直接手渡せばよかったかと考え、吉良は頭 を振った。
そこまで面倒を見てやる義理はないと。
生き汚く何でもやれば生存率は高まる。
正義や道徳の為にそれを下げるのは、バカのする事だ。
バカの事など知るかと、吉良は煙草に取り出し毒の煙を吸い込んだ。
翌日。
チンピラどもがどんな嫌がらせをしに来るのかと待ってはみたが、一向に現れる気配がない。
窓から外を確認しても監視役の人間も見当たらない。
組の人間から、この店が咲良組若頭の贔屓の店だと聞かされ、手を出すのを止めたのかもしれない。
何にせよ、面倒事がなくなりよかったと開店準備に取り掛かった。
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