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第9話
厄介事が去って3日が経ち、吉良は開店準備をしながら思う。
真っ直ぐな目をした男は、不器用ながらも生きながらえているだろうかと。
気まぐれとは言え、助けた人間が簡単に死体に変わってしまっては後味が悪い。
せめて完全に記憶から消え去るまでの間は生きておいてくれと、勝手な希望を並べていると、開店前のドアが開かれた。
くたびれたスーツに身を包んだ原木は無遠慮店内を進むとカウンターテーブルに持っていた茶封筒を置いた。
「お前の店を張っていたチンピラ。咲良組の末端の事務所の人間だったぞ」
「頼んでねぇのに調べてくれたのか?」
「恍けんな。調べさせる為に俺を呼んだんだろうが」
原木が眉を吊り上げると、吉良は野菜を洗う手を止め、棚から酒瓶を取り出した。
「飲むか?」
「勤務中だ。要らねぇよ」
代わりに烏龍茶を差し出すと、原木はそれを一口飲んだ。
「お前が匿っていた人間はどういう人間なんだ?」
「誰も匿ってねぇよ」
「お前自身が監視されていたなら放っておくか、自分で追い払うだろう。俺を呼んで追い払わせたんだ、誰かいたんだろう」
曖昧に微笑む吉良をそれ以上追及せずに、原木は席を立った。
「チンピラ共は薬 の売人だ。匿っていた人間が薬に関わっているなら、容赦なくしょっ引くからな」
「お前、マトリじゃねぇだろ?」
「関係ねぇよ」
そう言い捨て出て行く原木を見送ると、吉良はテーブルに置かれた茶封筒を覗いた。
中には記憶に新しいチンピラの写真と共に所属している事務所の情報などが書かれた書類があった。
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