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第10話

 原木から貰った情報を役立てるために公園に住む友人を訪ねて行くと、何処からか拾って来たらしいビーチチェアーに横たわり煙を燻らせていた。  ホームレスには決して見えない小洒落た格好をした男は、目深く被ったハンチング帽を持ち上げ、吉良の姿を確認すると相好を崩した。 「やあ、吉良くん。そろそろ来る頃だと思っていたよ」 「そりゃあ、どう言う意味だ源さん」 「私は情報屋だよ。持っている情報から君の動向くらい予測できる」 「なら俺がどう言う用件で来たのかも分かっているよな?」 「チンピラが例の青年を捕まえていないか、だよね」 「ああ」 「捕まえていないよ」  あっさりそう言われ、肩透かしを食らった吉良は出番のなかった茶封筒を二つ折りにし自身のウエスト部分に刺した。  源の情報にこれまで誤りはない。  捕まっていないと言うならそうなのだろうと、吉良は礼金を忍ばせた菓子箱を渡した。 「倍出してくれるなら居場所も教えてあげるよ」  懐に用意していた小さな菓子箱を2つ取り出し差し出すと、それを受け取った源は代わりに二つ折りにした紙切れを渡した。  紙を開き書かれている住所と名前に吉良は目を剥いた。 「これって、咲良組幹部の愛人の家じゃねぇかよ。何であいつがそんなところに居るんだ?」 「そりゃあ、私が頼んで匿って貰っているからだね」 「はあ?」 「実はあの夜、君が黒ずくめの青年を拾っているのを見たんだよ。暫くしてその青年が公園でうろうろしているのを見つけてね。若い男は公園では目立つし、公園(ここ)は金さえもらえれば直ぐに口を割る連中が多いから避難させった訳だ」  確かに、下っ端のチンピラが決して近寄れない場所ではある。  あるのだが……。 「緊急避難って、野郎と鉢合わせしたらどうすんだよ」 「大丈夫。亀くんは暫く九州に行っているからね。帰ってくる前に君が迎えに行くと思っていたし」 「俺が行かなかったら、どうする気だったんだよ」 「それはない」 「何でそう言い切れる」 「君は冷徹な一面を持つが、基本的に優しい。特にあの手の真っ当なタイプには弱い。だろ?」  図星を刺され吉良は苦虫を噛み潰したような顔で源を見た。 「そんなに見つめられても、これ以上は何も出ないよ。さあ、行った行った。早くしないと暇と性を持て余した女に食われてしまうよ」  手で追い払われ踵を返すが、最後に重要な要件を思い出し振り返る。 「あんただろ、俺の煙草を盗んだの」  源は返事の代わりにハンチング帽を持ち上げ、挨拶をし、吉良は溜息を零し公園を後にした。

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