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第6話
死ぬかと思った。
「ごめんね」
「いえ、その」
声に出ていたらしい。ナオトは赤い顔を枕に隠し、二の句に惑った。悪い意味ではなくその逆で、ようやくフィニッシュしたカオルと離れ、気を失うように眠りについたのは朝方だった。数時間後の現在の目覚めは夢見心地で、思い出すのは快楽地獄だった。
「悩みなんだよ、これ……泣かせちゃったな」
「いえ、……」
掠れた声を隠し、ナオトは四五歳の頭を抱えた。体の中は、今でもカオルの感触でいっぱいいっぱいだ。とんでもない醜態を晒した気もするがナオトには最高の一夜で、明かりのついた部屋で布団を被り、ここからどう次の約束に繋げるか悶々と苦悩する。
「どうすようか、ナオトくん」
「えっ」
ドキリと、尻が疼いた。
「俺もう行くけど、時間延長したほうがいいよな?」
「へぇ」
ナオトは脱力した。時間延長は望むところだが、カオルがいなければ意味がない。
情けない溜め息を返事と受け取り、カオルはのそのそと起き上がった。寝癖の頭を掻き、大アクビを放ってベッドから降りようとする丸い背中に、ちょっと待てと腕を伸ばし、腹を掴んで引き倒す。
「おわっあ」
「ぼくも出ますから」
「あ、動けそう?」
「大丈夫です。ざっとシャワー浴びてきますからちょっと……まだ三十分ありますね、よかった、イテテ……」
「いや、ゆっくりしてて良いよナオトくん、ほら、あれ、薬あったかな……」
腰がギシギシ、股関節も痛い。尻に至っては擦られすぎて、未だ火がついたように熱い。だからといってのんびりしてはいられず、胸に燻る感情がなんなのか判然としないまま、まずはカオルと親しくならなければと四つん這いの身を起こす。
「待っててください、すぐ————」
布団を剥がされ、尻を開かれた。
「ちょっとそのままね」
「カ、カオルさんっ、いっ————……っ」
やめて、と悶えた尻の中で、ピタリと指が止まった。塗られた冷たいものがつらく、抜いてくれと訴える涙目にカオルはこめかみを赤らめ、慌てて指を動かした。
「ごめん、そっちの意味じゃないんだこれ、薬塗るだけ、ほんと」
「ん————ぁ、ああ……っ」
「俺もう無理だよ、さすがに腰が……ごめんな」
さっさと終わらせ、頭上のティッシュを引き抜き、赤い顔で指を拭くカオルに、ナオトは真っ赤な顔で頷きながら、痺れた股間の息子を握った。
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