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第4話【あなたのすべてが可愛らしい】「お前は天使じゃない。この無自覚小悪魔め。」

―――『行動を共にするのはどの時点だ?ウォーキングも一緒にするか?土偶展示会も一緒なのか?』 「錦君は可愛いなぁ」 C地区運動公園には二カ月前――8月下旬だ――朝比奈家で過ごした時に錦に案内され何度か通った事が有る。 入園も駐車場も無料で敷地も広く整備も整っていることから、老若男女問わず人気が有る。 第一・第二駐車場併せて150台は収容できる駐車場が曜日によれば午前10時前には満車になる程だ。 貯水池がありそれを囲う様に、芝生広場、複合遊具を設置した中央広場、植物園、迷路のような緑の茂るウォーキングコースが設置されている。 ―――『ウォーキングするなら動きやすい服装と、スニーカーを準備しなくてはならない。』 「錦君は相変わらずあの小豆色のジャージ?」 ―――『そうだが、何か問題でも?』 野暮ったいダサいジャージを着用していたのに、ギャップというやつか――何故かやけに麗しく見えた記憶が有る。 しかし、あんな美少年が一人でうろうろして大丈夫なのか。 まだ幼いが、非の打ちどころのない美形で有ることは間違いないのだ。 場所によれば、人目につかないコースに差し掛かる事もあるのに。 僕が不審者の場合、同じ方向へウォーキングしているように見せて彼に悪戯できる機会をうかがうか、または彼に親し気に話しかけ、 一緒にウォ―キングをし、そのまま茂みに連れ込みあんな事やこんな事をするだろう。 錦に限り見知らぬ人についていくことはないと言いたい所だが、彼は二月前夏休み前日に初対面の男(僕だが)の車にホイホイ乗ってきた挙句、 家に帰るのが嫌とか言ってセックスまで許そうとした「前科」がある。 可愛かったがあれは宜しくない。 自分を安売りしすぎだ。 小児愛好者なら美味しくいただいていた展開だ。 「…ウォーキングは止めたら?家の周りを歩いたら良いじゃん。話を戻すよ。帰省するから週末を一緒に過ごそう。」 交通費がかかるが、まぁ、仕方がない。 アルバイト増やそうかな。 ―――『行動制限されるのは不快だ。』 「ただの提案であって制限などしないさ。所で君、オッサンに襲われたらどうするんだい?お兄さんに悪戯されたらどうするんだい?お姉さんに誘われたらどうするんだい? おば様に攫われたらどうするんだい?ん? 危機意識が欠如してない?男だろうと子供だろうと年齢性別関係なく別嬪さんは皆等しく防犯意識を持ち危機意識を高め危険予知能力向上に努めるべきなの。 分かったかい?はい、お返事は?」 完璧な人間はいない。 それでも何をさせても一通りの事は人並み以上に出来て、生まれながら容姿も家柄も最高水準。 ハイスペックな子だとは思ってはいたが、危険予知能力が残念レベルだったとは意外だ。 そういえば、料理もできなかったか。 ―――『いくら相手が変質者でも、俺には何かしたいような魅力はないぞ。我ながら可愛げのない子供だとは理解している。』 このお子様何を言ってるのだろうか。 成績優秀とか言う話は実は嘘なのか。 学校の防犯教育の時間は寝ていたのではないか。 変質者がいちいち性格など気にするものか。 自分の容姿に無自覚すぎる。 家柄の関係で何度か誘拐された経験があると聞いてはいたが――よく無事だったものだ。 というか、本当に 無事だったのか。鈍感過ぎて何されてるのか分かっていないとか有り得る。 (逃亡を防ぐため衣服を隠された彼は 全裸で堂々と「見たいなら見ろ」と誘拐犯の前に出るような子だ) ―――『自意識過剰と防犯意識を持つことは同義ではない。お前に心配されなくとも危機意識は人一倍高いと自負している。』 脳内でヴェルディのレクイエム「怒りの日」がとんでもない大音量で流れたのは、生まれて初めての経験だ。 二カ月前の投げやりな態度で人の車に乗り込んできたあげく、挑発までしてくれた子供が何を偉そうに宣ってるんだ。 押さえろ海輝。 お前は18歳そして相手は10歳だ。 「君、僕と過ごした夏休み覚えてる?危なっかしくて心配なんだけど…今度二人で防犯教育を実践してみよう。 僕が変質者役として君を襲うから。逃げれるか試してみよう。そうだ、それが良い」 ―――『お前は何を言ってるんだ。変質者役でなくてもお前は素で変態的だし、第一お前が俺に酷い事なんて出来る筈はない。』 一気に怒りがしぼんだ。 前半は失礼だが後半は全ての怒りを相殺できる程可愛い。 畜生。 お前は天使じゃない。この無自覚小悪魔め。 義弟が可愛くて正直辛い時が有る。 *********************** ◇10月16日の誕生花 薔薇:あなたのすべてが可愛らしい、愛のとりこ、 私はあなたを愛する、私を射止めて 情熱 気品、初恋、感銘 etc‥ ***********************

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