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第4話

 それからもトウヤの穴が解放される事はなかった。  俺のいない合間も常に玩具が挿入され、開かされている。  腹の落書きがとっくに消えても、排泄は数日ごと。大量の排便はトウヤにとっても耐える価値のある、気持ちのいいものらしい。  ペニスにも相変わらず管が通されたままで、清潔なものに交換する時と、どうしても射精したいと、狂ったように泣いて懇願した時以外は、塞がれていた。  尤もこちらはマメに排尿させているので、尿意に関してはそこまで切羽詰まった事にはなっていないだろう。  というか、ディルドにしろカテーテルにしろ、外そうと思えば簡単に外せる筈なのだ。その自由な手で、ただ引っ張り出せばいい。  けれどトウヤはそれをせず、俺の許可を得るまで我慢する。  なかなかによく出来た犬だ。  ただ今日は、どうも尿道が炎症を起こしかけていたようで、管を外して出掛けていた。  化膿止めの薬を与え、もし痛むようならと痛み止めも置いていった。  痛めつけるのは趣味ではない。  彼を娑婆に戻すつもりは到底ないが、具合が悪ければそのくらいは考慮する。  何しろ俺は別に、彼との恋人関係を解消したわけではないのだから。  今日もマンションのエレベーターに乗り込む前に、彼の携帯にメッセージを飛ばす。外出しないのだから解約してもいい気はしたのだけれど、引き篭もりでも使う場面はあるようだ。  あと1、2分で俺が玄関の扉を開けると分かると、このところトウヤは俺を出迎えてくれる。  歓迎されているというよりは、単純に日中、退屈なんだろうなと予想している。  勤労はてんでダメだったが、以前はよく、あちこち散歩に出たりしていた。決してインドア派ではなかった筈だ。  それでもトウヤは、文句を言わない。 「おかえり!」  扉を開けるなり、全裸の男が待機していた。  それこそ犬のように、両手を床につき、腰を下ろして。  犬になりきっているつもりではなく、真っ直ぐ立っている事がつらいのだろう。何しろ尻には深々とディルドが嵌っている。  初めて挿入したものより一回りは太く、同等に長いそれは重みもそれなりで、ぶらぶらと揺れているよりは床につけてしまった方が楽なのだ。  勿論椅子にも座れないからダイニングテーブルに着く必要がある時は、座面に膝立ちするスタイルを強いられた。そうすると両手は体を支えなくてはならず、今となっては犬食いも定着しつつある。  まあとにかく、躾けられた大型犬よろしく、甲斐甲斐しく玄関までトウヤは出迎えてくれた。  ここがこのフロアの、1番奥の部屋で良かった。さすがにご近所さんに見られるのは俺までダメージがデカい。 「ああ、ただいま。炎症の調子は……って、おい」 「ぇ、あっ、わ、ぁ、あっ……ま、待って、止まらないっ……キオ、これ、止まんないぃっ……!」  和やかなお出迎えも一転。  突如トウヤが、小便を漏らした。  たちまち水溜まりが出来、慌てて三和土にあった靴を退かす。  微かに、アンモニアの臭いが漂い始める。 「うぅぅ……」  結局、全てを出し終えるまで、失禁は続いた。  トウヤは泣きそうな顔をしている。 「……嬉ション?」 「それだ!」 「それだ、じゃない。はーもう、いきなりなんなんだ……」 「俺も驚いた……」  なんとか水溜まりを避けて、雑巾を取りに室内に上がり込む。  道を譲ったトウヤが体勢を変えると、また、ちょろ、と僅かに漏れた。 「お前、まだ……」 「ご、ごめんって! ちが、違うんだって」 「何が」 「その……我慢が、出来ないとゆーか」  しどろもどろに、トウヤは語り始める。 「ずっと、自分で出してなかったから……勝手に、出ちゃって……」 「……それで?」 「ひ、昼間はシート敷いて、ずっとその上にいたから、部屋はそんな、汚してないからっ! 今はちょっと、うっかりして……」  …………それって。  俺はフローリングに染み込んでいく液体の事も忘れ、おろおろと戸惑うトウヤを凝視する。  無言で見詰めていると怒られると思ったのか、どんどんと縮こまっていく。 「……ごめんなさい」  最後にはしおらしく、謝罪の言葉を口にした。  俺は笑ってしまいそうになるのを堪えながら、それなら、と、怒っているフリをする。 「何がごめん? ちゃんと言って」 「も、漏らして…………おしっこ、漏らして、ごめんなさい」  いい年した男に、トイレもままならない子供のような弁明をさせる。  それはとても、俺の欲望を刺激する。 「トウヤは、自分でおしっこも出来なくなっちゃったの」 「……そう、みたい……」 「そう。じゃあちゃんと塞いでおかなきゃね。痛みは? 引いた?」 「うん、大丈夫」 「それならまた管を入れよう。お願いして」 「え、あっ…………トウヤのちんちん、お漏らししちゃうから、塞いでください……?」 「いいよ。俺はここ片付けるから、部屋入ってな」 「っう、うん」  トウヤは慌ただしく、逃げるようにリビングへと立ち去った。しっかりと、ペニスを自分で押さえて。  帰宅早々に、他人の小便の処理をする羽目になったわけだが、悪い気持ちは少しもしない。  それどころか、かなりご機嫌だ。  トウヤはこれで、人らしくある為の機能を、1つ欠いたわけだ。  もう自力では、排尿をコントロール出来ない段階にきた。これでますます、外出など出来なくなる。  病気や怪我でそうなったのなら気の毒な話ではあるが、トウヤの場合は、望んでそうなったようなものだ。  大の大人が、漏らす。  我慢が出来なかったと、泣く。  可愛い。  その日はいつもより随分と、甘やかしてしまった。

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