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『-holic ―恋人がサプリ―』(2)
チャリン……と金属音がして、指先で持ったキーリングと部屋の鍵がぶつかり合う。
そのクリスタルのキーリングに視線を落とすと、綺麗な星空を思い出して、今ちょっとだけムカついた気持ちが不思議と落ち着いてくる。
口元が自然に緩んでしまう。
あれから……このキーリングを貰ってから、もう1年以上経つ。
俺も、今年の3月でもう二十歳になったんだ。
子供みたいに、ヤキモチなんて妬かないさ。
透さんの仕事が忙しくて休みがなかなか取れない事とか、ちゃんと分かってるし、もうそんな事でグダグダ拗ねたりなんかしない。
ドアの鍵を開けて、まだ真っ暗な玄関の灯りを点ける。
暫く留守にしていた部屋の中は、昼間の日差しの熱が篭っていた。
バルコニーの掃き出し窓を開けて夜の風を入れる。
寝室の窓も開けておこうと思って部屋に入ると、綺麗にメイキングしたベッドが目に入る。
そっとシーツに顔を近付けてみると、微かにだけど、透さんの匂いがする。
「あーー、早く帰ってこないかなぁー」
本格的にベッドに寝転がって、透さんの枕を抱きしめて顔を埋めた。
食事は食べて帰るって言ってたから、何かつまみになるようなもんでも作っておこうかなーとか、あれこれ考える。
それか、もう九月になったけど、まだまだ暑くて、今日も結構汗掻いたし、先にシャワーだけでも浴びておこうかな。
いやいや、待てよ……透さんが帰ってきたら、一緒に風呂に入るってコースも良くねぇか?
――――
『ただいま、直くん』
『おかえり透さん、まずお風呂にする? それか、おつまみ作ったから先に少し呑む? それとも……俺?』
『もちろん、直くんを一番に食べたいな』
――――
――なぁんちゃって!!
妄想が膨らみ過ぎて、俺はベッドの上でゴロゴロ転げ回る。
あああ、もうー、早く逢いたくて、しょうがない。
付き合い始めて1年以上経つけど、透さんと俺には倦怠期なんてものは無いと、断言できる。
だって逢う度に、前よりもっと好きになってる。
透さんだって、同じ気持ちに違いないって、自信持って言える。
だけどさー、身体は正直で、逢えない期間が長すぎると、なんてーか、ちょっとさ……俺、ほらまだ若いからさ。
透さんには言えないんだけど、出張先から夜とか電話くれた時なんて、普通の会話してるだけなのに、透さんの声を聞いてたら、なんかこうさ、ムラムラしてきちゃってさ。
自然に手が、息子ちんに伸びてってさ。
電話切っちゃった後はもう、そりゃ夢中でHand jobだもんなー。
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