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『-holic ―恋人がサプリ―』(4)
「透さん!」
出迎えに行ってみると、荷物を玄関の上がった所に置いて、透さんは洗面所で手を洗っていた。
「ただいま、直くん」
手を洗いながら、顔だけ振り向いて、あの笑顔!
「おかえりなさい!」
俺は嬉しくて、思わず透さんの背中に飛び付いて、負ぶさるような格好になる。
「逢いたかったー」
「俺もだよ、直くん」
そう言って、唇にチュッと触れるだけのキスをくれる。
透さんの首に巻きついている俺の腕を、ポンポンと叩いて「でもほら、ちょっと降りて。
これじゃ動けないよ」と苦笑いする。その表情がまたなんか、カッコいい。
「やだ、離れたくないもん」
子供みたいに駄々をこねてるって分かってるんだけど、なんかもう止まらなかった。
透さんの首に巻き付けた腕にも、腰から太腿の辺りに絡めた脚にもギュッと力を込めて、落ちないようにしがみ付く。
「しょうがない甘えん坊さんだね……だけど……」
と、もう一度唇にキスをくれて、
「何か当たってるんだけど……どうして、勃ってるの?」と、クスクスと笑ってる。
「……あ」
そうだった!
思い出して、慌てて透さんの背中から降りた。
「いや、えと、これは……」
(透さんと神谷社長のあんな事とか、こんな事を妄想してたら、興奮しちゃって、なんて言えない!)
何か言い訳を言おうと思うんだけど、何も思い浮かばなくて、顔が熱くなっていく。
「直くん」と、名前を呼ばれて、上目遣いに見上げると、ぎゅっと腰を抱き寄せられて、透さんの唇が近付いてきた。
「……ん」
そっと重なった唇に、思わず声が漏れてしまう。
薄く目を開けると、俺のことをじっと見つめている漆黒の瞳と目が合った。
長い睫毛が少し震えていて、やっぱり色っぽいなーって思ってると、透さんの舌が唇を割り入ってくる。
歯列をなぞられて、上顎を撫でて、俺の舌を絡め取る。
もうそれだけで、俺の膝は砕けて、力が抜けていってしまうんだ。
透さんの手が俺の腰をなぞるように動くと、もうさっきから硬くなってる息子ちんの先が濡れるのが分かった。
「……んっ……は……ぁ……ッ」
(――はぁ、気持ちいい……)
もうこのまま盛り上がって、洗面所でやっちゃってもいいな、なんて考えてると、唇が離れていく。
名残り惜しくて、無意識に舌が透さんの唇を追いかけてしまう。
「……んー、とお……るさん……」
透さんの名前を呼ぶ自分の声が妙に甘ったるい。
透さんは、少し苦笑い気味に「直くん、ベッドに行こうか」と言う。
えー、もうここで、このまま早くやりたいとか、思ってるんだけど、そんな事恥ずかしくて言えなくて、黙って透さんを見上げた。
「そんなに可愛い顔して見られたら……」
透さんの言葉がそこで途切れたと思ったら、俺の身体がふわっと宙に浮いて、透さんに難なくお姫様抱っこをされていた。
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