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 『来年も再来年も、ずっと……』(5)

「うわっ、ごめん、俺……つい……」  慌てて引こうとした手を透さんは笑いながら引き寄せて、そのままコートのポケットに入れてしまう。 「と、透さん……」  周りが気になって、思わず辺りを見回す俺。 「大丈夫だよ。みんなイルミネーションに夢中で他人のことなんて見てないよ」  耳元に、あの甘い声で囁かれてカーッと顔が熱くなった。本人は知らないんだろうけど、透さんの声って腰にくるんだよ!  確かによく見れば、肩を寄せ合って二人だけの世界に入ってるカップルとか、夜景の写真を撮るのに夢中になってたり、俺たちのことなんて気にしてる人は、一人もいないけど……。  俺は改めて、窓の向こうに広がる美しい夜景に視線を戻した。  異国を思わせるエキゾチックなイルミネーションの輝き。  低く落としたダウンライトの灯り。  静かに流れているピアノ曲。  ポケットの中で、最初は普通に繋いでいた手が、徐々に恋人つなぎに指を絡めてくる。  これだけ距離が近いと、ふんわりと透さんの匂いに包まれているような気がする。  ちょっと、さっきエレベーターの中でしたキスとか思い出したりして。  あれ? なんかすげえドキドキしてきた。  ――これってなんだか、めちゃロマンチックなデートじゃね?  まるで、初めてのデートをしているみたいな気分。  2年前に、偶然出逢ったあの時は、まだ付き合っていた訳じゃなかったけれど。まるであの時と同じようにドキドキする。 「……くん、直くん、どうする?」 「……ふぇ?」  夜景を見ながら、色々思い出してドキドキしてたから、透さんの話を聞いてなかった。 「どうしたの?」 「え、いや、なんでも!」  ちょっとあの出逢った日のことを思い出して、あの時の透さんはエロかったっなーってドキドキしてたなんて、とても言えない。透さんは不思議そうに首を傾げてるけど。 「この後どうする? 順路通りにイルミネーション見に行く?」 「あ、あぁ! そうだね、折角だから。俺、光のアーチくぐりたいし!」 「そうだね。じゃあ行こうか」  点灯前の時間帯より、今なら少しは混雑も落ち着いて、ゆっくり観て回れるかもしれないし。  ってことで、俺たちはエレベーターに乗る為に歩き始めた。ポケットの中で手を繋いだまま。

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