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『来年も再来年も、ずっと……』(6)
さっき走ってきた道を、もう一度今度はゆっくりと戻って、人の流れに流されながら順路を巡っていく。
俺が一番楽しみにしていた光のアーチは、正面から見ると光のトンネルに見えるように設計されていて、まるで異空間への入り口みたい。
透さんが持っていたデジカメで、光のトンネルをバックに写真を撮り合ったりしていたら、
「良かったらお撮りしましょうか」
って、見知らぬカップルが声をかけてくれて、ちょっと照れながらも、透さんと二人で肩を並べて撮ってもらって。
今度は、そのカップルの写真も撮ってあげて。
よくよく考えたら、透さんと二人だけで写ってる写真って、これが初めてなんだ。
「どこかで、写真立てを買って帰ろう」
透さんの部屋のと、俺の部屋のと、お揃いで二つ。
そんな話をしながら、またコートのポケットの中で手を繋いで。最後はさっき上から見た公園のイルミネーションを楽しんで、また来年もこの光の祭典が見れるようにと、願いをこめて募金もして。
「透さん、この後、どこか食べに行く?」
そろそろお腹も空いてきたし、どこかで食べて、その後は透さんのマンションでお泊りコースだなって、俺は勝手に考えていた。
「実はね、レストランの予約をしてるんだけど……」
「えっ?」
すごい! クリスマスイブにレストラン予約してるなんて! そんな事考えもしなかったから、びっくりしたけど、すげえ嬉しくて、街中だというのに、思わず飛び上がりそうになった。だけど、
「あ……ごめん、俺が予約していた訳じゃないんだけど……」
って、透さんはちょっと苦笑いをする。
「え? どういう事?」
「神谷社長がね、二人で行っておいでって」
「神谷社長が?」
神谷社長というのは、透さんの勤めている会社の社長。俺は、何度か会ったことあるんだけど……。
年はたぶん、40代前半で、なんて言うか嫌味なくらい渋くてカッコいい人。
俺は、何となく……なんだけど、その人のことが好きになれなくて。
いつも透さんが忙しいのって、その人のせいだなんて思ったりしてて。
あ、いやいや、そんな事はないんだって、仕事なんだからって、本当は分かってるんだけど……。
透さんが前の会社を辞める時に、うちに来ないかって、誘った人なんだけど。
なんていうのかな……俺は、その人が透さんのことを……狙ってんじゃないのかな……なんて、勝手に対抗意識を燃やしたりなんかしてるんだけど……。
あああっ、いやいや! そんなことあるはずないって思ってはいるけど、なんか二人だけで出張とか多くてさ……。ちょっと心配なんだ。
「直くん、どうしたの? さっきから顔が百面相してるけど……?」
「え、いや、何でもないよ。で、そのレストランてどこにあるの?」
「うん、ホテルのレストランで、実は今夜はそのホテルの部屋も予約してくれてるらしいんだよ」
――え?
「え、ちょっと待って……。神谷社長がなんで俺たちの為にそんな事を?」
――もしかして、俺たちの関係を知ってる?
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