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 『来年も再来年も、ずっと……』(10)

 歯列をなぞられ、舌を絡め取られ、咥内で熱い吐息が混じり合う。  長い長いキス……。吸い上げられて、甘噛みされて、舌の裏や上顎をねっとりと何度も撫でられて、口端から唾液が零れる頃には、身体の力が抜けてしまい、透さんにしなだれかかるように体重を預けていた。 「……透さ……ん」  漸く唇が離されて、頭ん中がボーっとしたまま透さんを見上げれば、情欲を浮かべた眼差しで見つめ返された。 「ね……直くん、憶えてる?」  ――何を?  ……って、快楽に呑まれて、すぐに声には出せなくて、目だけでそう応えると、透さんは口角を上げて艶然と微笑んだ。  その表情が、男の色気がダダ漏れで、俺はまた、腰の奥が熱く疼くのを感じてしまう。 「俺たちが初めて出逢った夜のこと」  あの時もクリスマスイブで、カフェレストランで臨時のアルバイトをした帰りに、公園のベンチに一人で座っていた透さんを偶然見かけて、俺が足を止めて……それで透さんの方から声を掛けてくれたんだ。 「公園で……偶然出逢った…時のこと?」  俺がそう答えると、透さんは小さく頷いた。 「そうだね。公園で出逢って、直くんがバイト先で貰ったクリスマスケーキを一緒に食べようって言ってくれたんだよね」  うん……って、声に出さずに頷けば、透さんは、またチュッて軽くキスをくれる。  それで透さんの家で食べようって、誘ってくれて……。 「……あの時の直くん、可愛かったな。ケーキを口いっぱいに頬張って、美味しそうに食べてたね」  そうだ。あの時、俺が口の周りに生クリームつけちゃって……それで……。 「去年は、クリスマスイブに俺が仕事で遅くなってケーキも食べれなかったから……。ね、今年は、あの時を思い出しながら、このケーキ食べようよ」  透さんは、片手で俺の腰を抱き寄せたまま、片手をテーブルに伸ばして、フォークを手に取ると、ケーキの上に乗っている苺を突き刺して俺の口元へ運んだ。 「はい、直くん。あーんして」  ——へ……?  あーん……? 俺たち出逢って2年になるけど、そんなことしたことがなかった。 恋人同士なら普通はするかもしれないな……っては思うけど。……でも、でもっ! なんだか凄く恥ずかしい、これ! 「と、透さん……だって、あの時、俺、ケーキ自分で食べたよ?」 「そうだけど……あーん、してみたいな俺」  ちょっと甘えたような声で、言ってくる。こんな透さんは初めてで、ちょっと戸惑うけど……。なんだか可愛いし! 断れなくて、俺はおずおずと口を開けた。

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