30 / 55
『来年も再来年も、ずっと……』(10)
歯列をなぞられ、舌を絡め取られ、咥内で熱い吐息が混じり合う。
長い長いキス……。吸い上げられて、甘噛みされて、舌の裏や上顎をねっとりと何度も撫でられて、口端から唾液が零れる頃には、身体の力が抜けてしまい、透さんにしなだれかかるように体重を預けていた。
「……透さ……ん」
漸く唇が離されて、頭ん中がボーっとしたまま透さんを見上げれば、情欲を浮かべた眼差しで見つめ返された。
「ね……直くん、憶えてる?」
――何を?
……って、快楽に呑まれて、すぐに声には出せなくて、目だけでそう応えると、透さんは口角を上げて艶然と微笑んだ。
その表情が、男の色気がダダ漏れで、俺はまた、腰の奥が熱く疼くのを感じてしまう。
「俺たちが初めて出逢った夜のこと」
あの時もクリスマスイブで、カフェレストランで臨時のアルバイトをした帰りに、公園のベンチに一人で座っていた透さんを偶然見かけて、俺が足を止めて……それで透さんの方から声を掛けてくれたんだ。
「公園で……偶然出逢った…時のこと?」
俺がそう答えると、透さんは小さく頷いた。
「そうだね。公園で出逢って、直くんがバイト先で貰ったクリスマスケーキを一緒に食べようって言ってくれたんだよね」
うん……って、声に出さずに頷けば、透さんは、またチュッて軽くキスをくれる。
それで透さんの家で食べようって、誘ってくれて……。
「……あの時の直くん、可愛かったな。ケーキを口いっぱいに頬張って、美味しそうに食べてたね」
そうだ。あの時、俺が口の周りに生クリームつけちゃって……それで……。
「去年は、クリスマスイブに俺が仕事で遅くなってケーキも食べれなかったから……。ね、今年は、あの時を思い出しながら、このケーキ食べようよ」
透さんは、片手で俺の腰を抱き寄せたまま、片手をテーブルに伸ばして、フォークを手に取ると、ケーキの上に乗っている苺を突き刺して俺の口元へ運んだ。
「はい、直くん。あーんして」
——へ……?
あーん……? 俺たち出逢って2年になるけど、そんなことしたことがなかった。 恋人同士なら普通はするかもしれないな……っては思うけど。……でも、でもっ! なんだか凄く恥ずかしい、これ!
「と、透さん……だって、あの時、俺、ケーキ自分で食べたよ?」
「そうだけど……あーん、してみたいな俺」
ちょっと甘えたような声で、言ってくる。こんな透さんは初めてで、ちょっと戸惑うけど……。なんだか可愛いし! 断れなくて、俺はおずおずと口を開けた。
ともだちにシェアしよう!