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 『目は口ほどに……』(2)

 ****  俺のマンションに帰り、玄関のドアを閉めて、先に靴を脱ごうとしている直くんの背中を見ていたら、後ろから抱きすくめたい衝動に駆られる。 「……透さ……」  驚いたように、肩越しに振り向いた直くんの唇を塞いで、名前を呼ぼうとした声も飲み込む。 「……っ……ふ ……」  合わさった唇の隙間から漏れる直くんの熱い吐息や、身体を俺に預ける重みが、直くんも俺と同じ気持ちだと教えてくれる。 「……まっ……て、先にシャワー……」  それなのに、素直じゃない言葉が返ってくる。  言葉にしなくても、熱い唇も、吐息も、身体も、こんなに雄弁なのに。 「……後でいいよ」  そんなワガママを言いながら、もう一度直くんの唇を塞いだ。  直くんには伝わっているんだろうか。  ――俺の気持ち。  本当は、片時も離れたくない。  ずっとこの腕の中に閉じ込めて、いつも一緒にに居たいと思う。  そんなワガママな俺を、直くんは知っているんだろうか。  キスを交わしながら靴を脱ぐ。  直くんのコートを脱がせながら、寝室へ移動する間も、何度もその唇を貪るように深く口付ける。  寝室の入り口で一度立ち止まり、直くんが俺の首に腕を絡ませてくる。  早く欲しいと伝わって、それがとても嬉しいと思う。 「……やっぱり、先にシャワーする?」  少し顔を傾けて、直くんに目線を合わせ、そんな意地悪を言ってみたくなる。 「――え? そんな……俺、もう……」  途端に、目を潤ませて、探るように俺の目を見つめてくる。  ――可愛いな。 「俺もう? ……どうして欲しいの?」  ごめんね直くん。やっぱり俺の方がワガママかもしれないね。 「……俺……も……我慢、できない……っ!」  みるみる顔が赤くなって、直くんは俺のコートを脱がし始めた。  うん、やっぱりそういう直くん、好きだよ。  もっと俺に甘えて欲しいなんて、俺のワガママだけど。  寝室の入り口で、お互いの服を脱がし合いながら、またキスをする。  身体が少しでも離れるのを惜しむように。  上半身が露わになったところで、直くんの腰を抱き寄せて、耳朶を甘噛みして、溝を舌で擽っていく。 「……ん……っ、」  唇から甘い声を漏らし、引き寄せた腰がぴくりと震えて、直くんの手が俺の背中を抱きしめてくる。  ぴたりと触れ合った肌が熱い。  そのまま、くるりと向きを変えながら、直くんの身体をベッドに押し倒して、首筋から啄むようにキスを落としていく。  なるべく見えない位置に、キツく吸い付いて、所有の証を残していく。  こんな大人気ないワガママを、君は許してくれるかな。  腰の括れを、手でなぞり、そのまま身体をうつ伏せさせて、背中にも口付けていく。 「あぁ……、……っ、ん……」  直くんの漏らす声が、段々と高くなっていく。  もう直くんの弱いところは、知り尽くしているつもりだけど、もっと知りたいと思ってしまう。  肩甲骨の横へ舌を這わせると、直くんは身体を捩り、声音に甘さが増してくる。  そのまま背筋から腰へと辿るように舌で愛撫しながら、前に回した手で熱い直くんの猛りに指を絡めた。 「……っあ……っ、」  高くなる嬌声を我慢するかのように噛み締めている唇に、後ろから顎を捕まえて、わざとらしく音を立たせて啄むようにキスをする。 「声、我慢したらダメだよ」  耳元に囁くと、潤ませた瞳で見つめ返してくる。

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