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『目は口ほどに……』(2)
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俺のマンションに帰り、玄関のドアを閉めて、先に靴を脱ごうとしている直くんの背中を見ていたら、後ろから抱きすくめたい衝動に駆られる。
「……透さ……」
驚いたように、肩越しに振り向いた直くんの唇を塞いで、名前を呼ぼうとした声も飲み込む。
「……っ……ふ ……」
合わさった唇の隙間から漏れる直くんの熱い吐息や、身体を俺に預ける重みが、直くんも俺と同じ気持ちだと教えてくれる。
「……まっ……て、先にシャワー……」
それなのに、素直じゃない言葉が返ってくる。
言葉にしなくても、熱い唇も、吐息も、身体も、こんなに雄弁なのに。
「……後でいいよ」
そんなワガママを言いながら、もう一度直くんの唇を塞いだ。
直くんには伝わっているんだろうか。
――俺の気持ち。
本当は、片時も離れたくない。
ずっとこの腕の中に閉じ込めて、いつも一緒にに居たいと思う。
そんなワガママな俺を、直くんは知っているんだろうか。
キスを交わしながら靴を脱ぐ。
直くんのコートを脱がせながら、寝室へ移動する間も、何度もその唇を貪るように深く口付ける。
寝室の入り口で一度立ち止まり、直くんが俺の首に腕を絡ませてくる。
早く欲しいと伝わって、それがとても嬉しいと思う。
「……やっぱり、先にシャワーする?」
少し顔を傾けて、直くんに目線を合わせ、そんな意地悪を言ってみたくなる。
「――え? そんな……俺、もう……」
途端に、目を潤ませて、探るように俺の目を見つめてくる。
――可愛いな。
「俺もう? ……どうして欲しいの?」
ごめんね直くん。やっぱり俺の方がワガママかもしれないね。
「……俺……も……我慢、できない……っ!」
みるみる顔が赤くなって、直くんは俺のコートを脱がし始めた。
うん、やっぱりそういう直くん、好きだよ。
もっと俺に甘えて欲しいなんて、俺のワガママだけど。
寝室の入り口で、お互いの服を脱がし合いながら、またキスをする。
身体が少しでも離れるのを惜しむように。
上半身が露わになったところで、直くんの腰を抱き寄せて、耳朶を甘噛みして、溝を舌で擽っていく。
「……ん……っ、」
唇から甘い声を漏らし、引き寄せた腰がぴくりと震えて、直くんの手が俺の背中を抱きしめてくる。
ぴたりと触れ合った肌が熱い。
そのまま、くるりと向きを変えながら、直くんの身体をベッドに押し倒して、首筋から啄むようにキスを落としていく。
なるべく見えない位置に、キツく吸い付いて、所有の証を残していく。
こんな大人気ないワガママを、君は許してくれるかな。
腰の括れを、手でなぞり、そのまま身体をうつ伏せさせて、背中にも口付けていく。
「あぁ……、……っ、ん……」
直くんの漏らす声が、段々と高くなっていく。
もう直くんの弱いところは、知り尽くしているつもりだけど、もっと知りたいと思ってしまう。
肩甲骨の横へ舌を這わせると、直くんは身体を捩り、声音に甘さが増してくる。
そのまま背筋から腰へと辿るように舌で愛撫しながら、前に回した手で熱い直くんの猛りに指を絡めた。
「……っあ……っ、」
高くなる嬌声を我慢するかのように噛み締めている唇に、後ろから顎を捕まえて、わざとらしく音を立たせて啄むようにキスをする。
「声、我慢したらダメだよ」
耳元に囁くと、潤ませた瞳で見つめ返してくる。
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