48 / 55

 『Feliz año nuevo!』(4)

「――う、酒くさい……」 「あはは、だってお酒だもん」  いや、そうじゃなくて、なんでローション使うんだよ! 「じゃあ、服、脱いだ方がいいよね」  透さん、何言ってんのっ!?  透さんの長くて綺麗な指が、俺のシャツのボタンを外していく。 「ちょ、透さん、なんで?」  なんで、透さんが皆の前で、俺の服を脱がせるんだよ? 「ん? なんでって、何が?」  そう言いながら、チュッと音を立てて俺の唇を啄ばむ透さん。 「あ、いいなー、俺にもやらせて、ちゅって」 「な、何言ってんだよ、啓太! おまえには、ゆり先輩がいるだろう?」  カウンターの椅子に座った透さんに後ろから抱きしめられて動けない俺は、必死に足をばたつかせて、啓太が近付いてくるのを阻止しようとした。 「ごめんね啓太くん、キスは駄目だよ。唇は恋人だけのものだから」 そう言って、透さんは俺の顎に手を添えて、後ろを振り向かせると唇を合わせる。 「……ッ、ん、」  咥内に挿ってきた透さんの舌に上顎を撫でられただけで、俺のイケナイ身体はぶるっと震えちゃう。 「ちぇー、つまんないな。あ、じゃあ俺、それ塗ってみたい」  啓太は、キスを諦めたのか、みっきーの手からローションのボトルを取り上げた。 「……ちょ、啓太、ふざけんな……」 「直、罰ゲームなんだから、観念しな。透さん、しっかり捕まえててくださいね、直が動かないように」 「分かってるよ」  カウンターの椅子に座った透さんの足の間に身体を挟まれて、上半身の着ているものを全て剥ぎ取られて、後ろから抱え込まれる。 「……透さん……」  肩越しに振り返って、透さんに助けを求めても、透さんはにっこり微笑んで「大丈夫だよ」って言うだけで……。 「――わっ! 冷たっ!」  いきなり啓太が、俺の首筋辺りからローションを垂らして、胸元へと流れていく冷たい液体に身体が跳ねた。 「じっとして」  だけど跳ねる身体は、透さんにしっかりと後ろから羽交い絞めのようにされて、身動きが出来なくなった。 「なーお、大丈夫だよ、直ぐに熱くなってくるから」  みっきーが、なんたってブランデーだからねー、とか言ってるのが聞こえる。  なんだか本当に身体が火照ってきて……。  肌から立ち上る酒の匂いに酔ってしまったのか。

ともだちにシェアしよう!