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 『Feliz año nuevo!』(6)

「直くん、こういうのが好きだったんだ。知らなかったな」  叩かれて悦ぶなんてね……と、俺の頭を優しく撫でてくれる透さん。  ――ち、違う! って、言いたいのに、なんで声出ないんだ。  俺は助けを求めるように、透さんを見上げた。精一杯目を潤ませて。  だけど透さんは、俺のそんな気持ちに全然気づいてないようで、にっこりと微笑んだ。 「じゃあ今度、俺もこういうの直君にやってあげるね」  ――え……? いや待てよ……。透さんになら俺……、何されてもいいけど……。  って、ちょっと思ったら、自然に口元が緩んでしまってた。 「はは、期待して笑顔になってるよ、直のやつ」  と、啓太の声が聞こえてきたのと同時に、突然俺のケツにめがけて、桜川先輩が羽子板を振り下ろした。  パンッ! 「痛っ! な、何すっん……」 「お前は、新年の挨拶を噛んだ上に、羽根突き勝負では俺に負けた。だからこれはお仕置きだ」 「はっ? はぁ? ワケわかんね……ッい……ッ」  俺が最後まで言い終わらないうちに、また羽子板が俺の尻を直撃する。  絶対、尻臀が赤くなってるって分かるくらいに、熱を伴った痛みに襲われる。  抵抗しようにも、手足は、みっきーと啓太に押さえつけられて全く動けない。  カウンターの椅子に座って、じっとこの様子を見つめている透さんの視線が、なんだか……突き刺さる。 「よそ見してんじゃないよ。ちょっとは反省したらどうだ?」  透さんの方を見ていたら、桜川先輩に背後から髪の毛を引かれる。 「――なっ、俺、悪くないっ」  パシッ! パシッ!  今度は容赦なく連続で打たれて、俺は硬く目を瞑った。 「……アッ……んっ」  俺のケツを打つ音が、リズムよく店内に響いてて、それを聞いていたら頭ン中がグルグルしてきた気がする。  ――ご、ごめんなさい……俺が悪かったから。だから……や、やめて……痛いっ、痛いよ……。  ……痛い…………?  あれ? いたぃ……あ、れ? 痛くない?  それどころか……気持ちいい……。  何この振動。ゆっさゆっさ……って、身体が揺れてる……。 「……ふぁ?」  目を開けると、なんか視界が上下に揺れている……。 「目が覚めた? 直くん」 「……と、おるさん?」  いつの間にか、辺りは夜明けの薄白い明るみが広がりかけていて、駅まで続く緩くて長い坂道を、透さんは俺を背負って歩いていた。 「寒くない?」  俺を背負ったまま、顔を横に向けてそう言ってくれる透さんは、いつもの優しい透さんで……。  透さんの吐く白い息が俺のほっぺたをくすぐっていく。 「……うん、大丈夫。……ねえ、それより皆は?」

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