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『Feliz año nuevo!』(7)
「もう朝だからね、もう皆それぞれ帰って行ったよ」
「え? そうなの?……あれ? 俺、寝ちゃったのかな」
桜川先輩と、羽根突きの勝負してそれから……なんかブランデー入りのローションかなんか塗られて。
それから……。
「ねえ透さん、俺さ、桜川先輩にケツぶたれたんだよね」
「え? 何言ってるの?」
――え、違うの?……でも、なんか身体怠いし、ケツも痛いし……。
「直くん、もうすぐ二十歳だけど、あんまり無理してお酒飲んじゃダメだよ」
「え? なんで?」
やっと二十歳になって、大人の仲間入りできるのに、酒飲んじゃダメって、なんで今そんなこと言うんだろう。
「年が明けて乾杯して、コロナビール一気飲みしたでしょう? 直くんはアルコール弱いのに、そんな飲み方したらすぐに酔っちゃうよ」
「え? 俺、乾杯のあと、どうなったの?」
不思議に思って透さんの顔を覗きこむと、「憶えてないの?」って溜息と共に、呆れたような声が返ってきた。
「ビール一気飲みの後、大人しいなぁと思って見たら、カウンターに寄りかかって寝てたんだよ、直くん」
「え?」
――えーーーーーー?! うそ!
乾杯の後、寝ちゃってたの? 俺。
「いや、だけど、俺、寝る前に桜川先輩と羽根突きで勝負したよね?」
そもそも、俺が新年の挨拶を噛んだからって、みんなに責められて、それで羽根突きで勝負ってことになったんだ。
「羽根突き? そんなの光樹先輩の店の中でできないでしょう?」
「えー? そう? そうだっけ……?」
「そうだよ。さっきから変な事ばかり言って……。いったいどんな初夢を見ていたの?」
だからね……と、透さんは肩越しに俺を見て、言葉を続けた。
「お酒は、無理して飲んじゃダメだよ」
「……うん」
――なぁんだ。羽子板でケツぶたれたのも、みんなで寄ってたかって俺の身体を弄り回したのも、全部夢だったんだ……良かった。
そうだよな。そんなこと、透さんが許すはずないもんね。
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