世間はバレンタインデー。 街中には人が溢れ返り、右を見ても左を見てもカップルカップルカップル… 俺の隣には西野さん。 またしても疑似恋愛ごっこのデート中だ。 はぁ… だからさ、俺はそろそろ彼女を作って落ち着きたいのに… このバレンタインだって普通は彼女とデートするもんだろう？ 俺は泣く泣く街を歩く。 ことあるごとに東京に来てくれる西野さんに悪いと思い、今回は俺が大阪に来た。 たまたま休みのせいか店も大混雑で昼飯にさえありつけていない。 『人すごいなぁ。』 『すごいですね。まぁバレンタインですから。』 『バレンタインってそんなもん？』 『まぁカップルはこうやってデートするんでしょうね…。』 俺も彼女としたかった…と心の中で叫ぶ。 『そうか。じゃぁ俺たちもデートしてるしカップルって感じだな。』 やたらと満足そうな西野さんを見て溜息が出る。 この人本気で言ってるんだろうか？ 『お前さ、今日夜どうすんの？』 『あぁ…帰れるなら新幹線で帰りますけど、明日も休みだしビジネスかどっかに泊まってもいいですけどね。夜にどっか行きたいとことかあるんですか？』 『いや、泊まるならうち来るかな？と思って。』 『えぇっ!?』 『恋人同士だろう？』 『だから、疑似ですって…』 何回このツッコミさせるんだ、この人は。 『夜さ、いい店知ってるからそこ行って夜景見て帰ろう？』 『夜景？』 『うん。恋人同士は夜景見てなんぼだろ？』 またこの人は… ほんとドラマの見過ぎなんじゃないか？ でもこうやってまともな恋愛して、早くいい人見つけてほしいな…なんて思ったりして。 俺たちは夜までの時間をブラブラしながら潰した。