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10 幸せになるまであと314日-2。
ゲームセンターに行ったり、買いもしない店に冷やかしで入ったり、何気に楽しい時間潰しだった。
いつもそうだけど、この時間が終わろうとする時、なぜか少し寂しがっている自分がいて戸惑う。
疑似だって自分で何度も西野さんにツッコミ入れてるクセに…
これはきっと彼女がいなさすぎて、俺の頭がイカれたのだな。と何度も一人で納得する。
『この店。』
着いたのは小洒落たイタリアンのお店で、隠れ家的なのか一本路地を入ったその店は街中の人が溢れ返るごちゃごちゃした感じは一切なく、お客さんも俺たちの他に一組しかいなかった。
『よくこんなとこ知ってましたね。』
『うん。天野がこっち来るっていうから調べた。』
『そうですか…』
なんだろう。
今ドキッとした。
それって、俺と来るためにわざわざ調べて探してくれたってことだよな?
なんか嬉しい。
『気に入った?』
『はい!!!雰囲気もすごくよくて…西野さんありがとうございます。』
はっ…!!
俺は何を喜んでんだよ。
これは疑似恋愛ごっこで、この店はきっといい人ができたら一緒に来ようと思って西野さんは俺と下調べに来ただけで…
『天野?どうした?』
『いえ、なんでも…』
俺、しっかりしろよ…
流されるな流されるな。
気をしっかり持て。
俺はノーマル。女が好きだ。
この疑似恋愛ごっこが終わったらソッコー彼女作る!!
ってか、疑似恋愛なんだから今作ってもいいんじゃないだろうか?
うん。そうだ。そうだろう?
『天野、美味いか?』
『はい。すごく美味しいです。』
『よかった。』
じゃなくて!!一回聞いてみよ!!そうしよう。
『西野さん…これって疑似恋愛ですよね?だから俺、彼女作っても…』
『ダメだ。』
『な、なんでですか!? 』
『疑似恋愛でもなんでも今お前は俺の彼氏だ。浮気は許さん。』
『えぇっ!?』
『一年だけだろう?もう少し待て。』
はぁ…
流されるな自分。
そう何度も言い聞かせたのだった。
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