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34 幸せになるまであと115日-1。

『あれ?天野さん、それなんですか?』 しまった…と思った時には、時すでに遅し。 山崎と社食で昼飯中、何も考えずに開いたカバンの中から、中のチャックに付けたクマのぬいぐるみのキーホルダーが飛び出した。 そう。西野さんとお揃いのブサイクなクマだ。 『うわ…ブサイクですね…』 『うるせぇよ。』 『貰い物ですか?』 『…』 『ってか、なんで中のチャックに付けてんですか?普通にカバンに付ければいいのに。』 『それはさすがに…33のオッサンがカバンにクマ付けてたら不審者だろ。』 『そうですか?俺はいいと思いますけどね。』 『おう。お疲れ。隣いい?』 『はい!!』 盆を持った小宮さんが返事をした山崎の隣に座る。 山崎の嬉しそうな顔。 いいねぇ…ラブラブで。 『小宮さん!!見てください!!このブサイクなクマ!!』 そう言って山崎が俺のチャックに付いたクマを見せる。 『お前の趣味?』 少し笑いながら小宮さんが聞いてくる。 『いや…このクマ可愛くないですか…?』 少し恥ずかしくてハッキリしない声でゴニョゴニョと言う。 『あれ?このクマどっかで…』 小宮さんが顎に手を置きながら宙を仰ぎ何かを考え始めた。 『あっ!!!』 『なんですか!?』 すかさず山崎が聞く。 『このクマさぁ、この前大阪に出張に行った時、西野も持ってたんだよ。それも、可愛いだろ〜なんて言いながらみんなに見せて…』 あの野郎… なんて思うが、なぜだかどこか嬉しい。 『お前らってもしかして…』 『い、いや、違います。た…たまたまじゃないですか!?』 吃りながら必死にそう言うと、そうか…と小宮さんは納得してくれた。 なのに隣の山崎は怪しい目で俺を見る。 『なんだよ。』 『いや、別に…』 なんて言いながらもコイツは絶対に怪しんでいるに違いない。 面倒臭ぇことになったぞ… 山崎にはあとで上手いこと言い訳することにして、とりあえず西野さんにメールを送ろう。 そう思い、席を立ったのだった。

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