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36 幸せになるまであと109日。

《今日朝からそっちに行くことになったから。》 起きた時にこんなメールが来て、俺は激しく焦った。 山崎のヤツ絶対西野さんに聞く。 でも仕事で来んのに、来るなとは言えねぇしなぁ… まぁ山崎にぐらいなら… そう思うけど、やっぱり嫌だ。 何が嫌かって…恥ずかしい。 いや、たぶん普通に疑似恋愛ごっこをしているだけなら平気なんだけど、まさかの俺が本気になってしまっているもんだから恥ずかしいのだ。 ま…まぁ、俺が本気だってことを悟られなければ済むことだけど。 昼休みにかぶったアポを終わらせ、社食で飯を食ってる暇はねぇなとコンビニで買ったオニギリを片手に休憩所へと向かう。 『あっ。』 いらぬところに来てしまったようだ。 休憩所には山崎、小宮さん、そして西野さん。 なんだよこの顔ぶれ… 踵を返して事務所に戻ろうとした俺に西野さんが声をかけた。 『天野!!』 『…はい。なんでしょう……?』 『こいつらに言っちゃってもいい?』 『何をですか?』 殺意ありありの目で西野さんを見ながらやめてくれと念を送る。 『何をって疑似恋愛ごっこのこと。』 ………。 全然念通じてないし… 『疑似恋愛ごっこ!?』 山崎が驚いた声を出す。 はぁ… 俺は仕方なく事情を話した。 『…と、いうわけ。』 『なるほど。』 説明し終わった俺に山崎がうんうんと頷く。 『で、西野は成果出てんの?』 小宮さんが西野さんに聞く。 『ん?出てんのかなー?手当たり次第ほしいとは思わなくなったけど?』 『おおー。それ成果出てんじゃね?』 『だったら天野のおかげだな。』 そう言って頭をポンッと叩かれた。 人前でそういうことをしないでほしい。 変に意識してしまうじゃないか。 『山崎と小宮さぁ、コイツが浮気しないか見張ってくれよ。』 『だからしませんって!!』 『本当か?』 『本当ですって。いつも言ってるじゃないですか!!』 うっ…… 視線が痛い。 山崎と小宮さんを見ると俺たち二人を見てニヤニヤしていた。 『二人お似合いじゃん?』 『俺もそう思いました!!』 『本当に付き合っちゃえば?』 『いや、天野に悪いから。あっ!!俺行くわ!!新幹線乗り遅れる!!』 そう言って片手を上げると、西野さんは走って行ってしまった。 天野に悪いから…か。 「付き合わねぇよ」という言葉をオブラートに包んだつもりなのだろうか…? なぜだか酷くショックで、山崎達が休憩所を出て行ってからも一人ボーッと過ごしたのだった。

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