43 / 68

43 幸せになるまであと63日-1。

疲れた… ヘトヘトの体を引きずりながら家へと向かう。 今日はすべてのアポが予想以上に長くなってしまい、帰りがかなり遅くなってしまった。 腹減ったなぁ… 作るのも面倒臭いし何かコンビニで買って帰るか?なんて思ったが、そんな気力すらなく家へと急ぐ。 明日が休みで幸いだ。 西野さんとは全然会えていない… って言っても、今月は頭に2日連続でうちに泊まってくれたからいいんだけど… なんだか最近、毎日でも会いたいと思ってしまうのだ。 とにかく顔が見たい… メールや電話では満足できなくて、自分の西野さんへのハマり具合は相当なものなのだと戸惑う。 明日休みだし大阪に押しかけちゃおうかな… なんとかして会える方法はないかと考えながら歩いているとマンションに着いた。 とりあえず風呂入って、なんか食って、それから考えよ… 鍵を開け、中に入る。 『ただいまっと…』 いつもの独り言の挨拶。 の、ハズだったのに… 『おかえり。』 『おかえり!?』 玄関からリビングの方を見ると扉から薄っすらと光が漏れている。 泥棒か!? なんて思ったが、合鍵を渡してあったことを思い出し、声の主が自分の会いたかった人だとわかるとリビングへ急いだ。 『西野さん!?』 『おかえり。どうした?そんなに焦って。』 『いや…なんか、すみません…』 恥ずかしい…。 嬉しさのあまり、少し取り乱してしまった。 でも本当に本当に嬉しくて、今すぐ抱きつきたい衝動に駆られる。 だけど、そんなことはできなくて… 平然を装うのに必死だ。 『あれ?明日は休みですよね?こっちで何か用事ありました?』 『うん。』 『仕事?』 『天野とデート。』 『は、はぁ!?』 ヤバイ。 心臓がうるさい。 ドキドキ聞こえてねぇかな? 『ダメ?』 『ダメ?って言われても…』 『明日なんか用事あんの?』 『いや、ないですけど…部屋でも片付けようかな…と。』 『じゃぁいいじゃん!!俺も一緒に片付ける。一緒にいれるなら、それも立派なデートだし。』 笑顔が眩しい… なんだこれ。 ドッキリかなぁ? 帰ってきたら西野さんはいるわ、嬉しいこと言ってくれるわ… あっ!!夢か!! 最近残業続きで結構疲れてたからなぁ… ギュッと自分の頬を抓る。 『痛っっ!!!』 『お前何してんの?』 『いや…別に…』 結構な力で抓ってしまい、きっと赤くなっているだろう頬を優しく撫でながら部屋着に着替えようと寝室へ向かう。 『天野、飯食った?』 『まだです。』 『勝手なことして悪いな…って思いながらも、俺作ったんだけど…食う?』 『えっ!?マジすか!?ヤッタ!!!俺腹ペコなんすよ!!!』 はっ… あまりの嬉しさにいつにもなくはしゃいでしまった。 『そう?よかった。そんなに喜んでもらえると思わなかった。』 そう言って笑いながら西野さんはキッチンに立つ。 俺は急いで寝室に入り部屋着に着替えると、リビングに戻ってキッチンに立つ西野さんを見る。 この人、なんでも器用にこなしちゃうんだよなぁ… しかも何やっても様になるし。 『座ってて。持ってく。』 そう言われ、食卓に座って待っていると美味しそうな料理が運ばれて来た。 『うわ…うまそ…』 ハンバーグにサラダにスープ。 一人暮らしでハンバーグなんてあまり作らない分すごく嬉しい。 『いただきます!!』 『どうぞ。』 テレビを見てればいいものの、西野さんは食卓の俺の向かいに座りながら嬉しそうな顔をして俺を見ている。 『?なんですか?』 『いや、美味そうに食べるな…と思って。』 『美味そうってか、本当に美味いですよ!!!ありがとうございます。』 『どういたしまして。』 またしてもそのキラキラした笑顔に俺のすべては持って行かれ、心臓はドキドキ。 なんとしてでも静まれ…と自分に言い聞かせながらハンバーグを口へと突っ込む。 『口に入れすぎじゃね?』 『んんんんんんん。』 (大丈夫です。) 『やっぱガキだな。』 そう言いながら俺を見て笑う西野さんにまた釘付けになって… このままこの幸せが続けばいいな…なんて。 もうすぐ終わってしまう疑似恋愛ごっこ。 二人の付き合いは疑似だけど、俺のこの気持ちは本物で… なんだかすごく辛くなった。

ともだちにシェアしよう!