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57 幸せになる日-3。
『…野さん!!天野さん!!』
『んぁ?』
『着きましたよ!!』
『おぅ。ありがと。』
ぐーっと伸びをして、首を回した。
少し寝たおかげで気持ちもスッキリしていて、いらぬ考えは消え、しっかり仕事モードへと突入した。
『よし、行くか。』
『はい。』
二人で駅を出て、本社へと向かう。
『お疲れさまです。』
『お疲れさまです。』
本社に着き、会う人会う人に挨拶をして研修が行われる会議室へと向かう。
席に着き、配られる資料に目を向けた。
担当:西野
だって。
ってことは、この研修の講師は西野さんか?
なんだか浮かれてしまう。
ガチャリと扉が開き、何人かの役員が入ってきた。
『今日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。新人の皆様方におかれましては……』
と、長い長い挨拶の後、役員達は出て行き一人の男性が入ってきた。
うわ…西野さんだ…
ワクワクドキドキしたこの感情。
なんだろう?
この変な気持ち。
顔ニヤけてないかな?なんて心配になったりして。
『えぇ、この研修を担当させていただきます西野です。よろしくお願いします。』
という挨拶から研修が始まり話を聞く。
すごく聞きやすくて、資料も見やすい。
やはり西野さんは何事も完璧でかっこいい。
一旦昼休憩を挟み、午後からも研修が始まった。
17時終わりの研修はピッタリその時間に終わり、最後もまた役員の挨拶で終了した。
自分たちが宿泊するホテルへと移動する。
『すごく聞きやすくて、わかりやすい研修でしたね!!』
『そうだな。俺も思った。』
俺の西野さんだぞ、すごいだろ。
なんて、アホな考えを心の中で呟く。
何が俺のだ。疑似だっつーの。
『懇親会って18時からでしたか?』
『だと思うけど。じゃぁ17時50分にここ集合で。』
そう言うとロビーで新人君と別れた。
俺は部屋へと向かう。
携帯を取り出してすかさずメール。
《研修お疲れさまでした。すごくわかりやすくて、俺も勉強になりました!!》
こんな感じでどうだ?
しっかり聞いてましたアピールをしとかないとな…。
俺、必死。
そんな自分に笑ってしまう。
どう足掻こうと、今日が終わるとすべてが終わる。
そんなことはわかっているけど、あと少しの幸せな時間を楽しみたいのだ。
ピロリン♪とメールの返信が来て慌てて受信BOXを開く。
《ちゃんと聞いてたんだな。よしよし、えらいぞ。ありがとう。》
うおー!!
よしよし、えらいぞ。だって。
俺、褒められた!!
…って、気持ち悪すぎる自分に吐きそうになる。
西野さんとの疑似恋愛ごっこを始めてから、自分が自分じゃなくなってしまっている。
だけど、それは新しい発見で、本当の自分はこんな姿だったのか…とわかったり、それが結構楽しくて嬉しいのだ。
荷物を整理して、色々片付けをしていると約束の時間になったのでロビーへと急いだ。!
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