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58 幸せになる日-4。
『お待たせ。』
すでに新人君はロビーにいて一緒に会場へと歩き出す。
研修は本社で行われたが、懇親会は自分達が泊まるホテルの大広間で行われる。
廊下を歩き進めるとすごく大きな扉があって、「ーー会社、懇親会会場」と書かれていた。
ここだな…と扉を開けると、人、人、人。
すごい人で溢れ返っていて、隣の新人君は驚きのあまり固まっていた。
『す、すごい人ですね…』
『あぁ…今日は色々なところから集まってるからな。適当に飲んで適当に食っていいぞ。』
そう言うと、大はしゃぎで新人君は中に入って行った。
『ガキかよ。』
笑いながら独りごちて俺も中に入る。
西野さんの姿を探すけれど、どこにもなくて…。
それよりも人がすごすぎて、探し出せないだけかもしれない。
どこにいますか?
なんてメールをするのは柄にもないのでやめておく。
会ったら「どうも〜」的な感じで軽く絡んで…
と、色々妄想するのに全然会わない。
時計を見ると2時間が過ぎていた。
この懇親会何時まで?
そう思うのに、終わる気配は全くない。
『天野さん〜!!』
そう呼ばれ隣を見ると、真っ赤な顔をした新人君。
『なに?お前酔ってんの?』
『酔ってませんよ?』
そう言う新人君の足元はフラついている。
『お前なぁ…』
溜息をつきながら椅子のある所へと連れて行く。
立食パーティーだったため、隅っこの方に少しだけ準備された椅子に新人君を座らせる。
『水持ってくるから待ってな。』
またしても自分の面倒見のいい部分が出てしまい、新人君のために水を取りに行く。
水を手に新人君の所に戻ると姿がなかった。
『あれ?』
『あの…ここに座ってた方のお連れ様ですか?』
『はい。』
『なんか、気持ち悪いとか言って走って行かれたのでお手洗いかと…』
『あ…ありがとうございます。』
そう言って頭を下げると、トイレへと向かった。
『ったく、おーい。大丈夫か?』
トイレに入るなり叫ぶと一番端の個室から死にそうな声が聞こえる。
『あ〜ま〜の〜さ〜ん。』
『いいから喋んな。吐けるもん全部吐いとけ。』
そう言うと、新人君は唸り始めた。
『背中摩るか?』
『お願いします…』
個室に入り、後ろから背中を摩ってやる。
もらいゲロしそうなところをなんとか我慢して、持っていた水を渡した。
『ありがとうございます…』
『部屋戻るか。』
無言で頷く新人君の腕を自分の肩にかけ、部屋へと急いだ。
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