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天野さんの初体験

『なぁ、なんでそんな遠いとこにいんの?』 今日は付き合ってから初めて西野さんの家にお泊りだ。 『いや…別に。』 『いや別にじゃなくて、もっとこっちこれば?』 晩飯を食い、シャワーを浴びて、後は寝るだけなのだが… 西野さんの家には何度も泊りに来たことはあったが、本当に付き合い始めてからは初めてで、今までの疑似恋愛ごっこの時にはなかったことが起こるのではないかと踏んでいるわけで… そう。 俺は今晩もしかするともしかするかもしれない。 やっぱ俺が受けなのかな? なんて考えていたら昨晩は眠れなかった。 しかも俺はアホなことに、初めてするのなら酔った勢いではなくて、愛に溢れたセックスがいいと酒を一滴も入れていないのだ。 いや、これを西野さんに口に出して言ったわけではないのになぜか西野さんも酒を飲んでいなくて… シラフの二人は何をしていいのか…って、戸惑っているのは俺だけなんだけどな…。 『天野。何してんだよ。』 『何って…何も。』 『そっからテレビ見えてる?』 『み、見えてますよ!!』 いや、あんまり見えてないけど…今はテレビよりも、この後何が起こるかの方が気になって仕方が無い。 『寝る?』 『ね!!ねね、寝る!?』 『何ビビってんだよ。なんもしねーよ。』 『な…なんもしないんですか…』 『何落ち込んでんだよ。何?してほしいの?』 意地悪な笑みを浮かべ、西野さんが俺に近付く。 『ストップ!!そんなこと言ってませんよ!!よっしゃ!!寝よう。寝ましょう!!』 『なんでそんなに気合い入ってんの?』 笑いながら言う西野さんを無視して、俺はベッドへと向かった。

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