5 / 10

第5話

 ぐちゅ、ぐちゅ、というエロい音とともに、男が俺の内壁を自分のブツで擦る。 「あ、あふ、も、ソコ……っ、こ、すんな……っ! もだめ、気持ちイイ……っ!」  目じりに涙を溜めながら、あられもない姿で情けない声を上げる俺。  経験値なさ過ぎてなのか、男が上手すぎるのか、陥落が早かったと自己嫌悪。  だって、気持ち良すぎて……っ!  みんな、こんな気分で血吸われてたのかよ……っ!  も、訳わかんなくて頭ぐちゃぐちゃ……っ。 「汐音……っ、汐音、中に、出したい……っ!」  そろそろ男もイきそうなのか、切羽詰ったような声とともに、屹立を俺の奥深くに突き立てる。  それすら気持ち良くて、俺のしっかりと勃ったモノから、もう何度目かわからない白濁が垂れる。  身体の奥に何かが流れ込んできて、かあああっとそこが熱くなる。  あ、この感覚、これ血を飲んだ時みてえ……。  熱い。  身体の奥が満たされる……。  朝目覚めると、俺の身体にがっちりと腕を回して寝ていたはずの男はいなくなってた。 「……目ぇ覚めて、我に返って慌てて帰ったのか……?」  酔っ払いがいなくなってホッとした、はずなのに、何となく寂寥感が胸を過る。  俺、昨日あんなことしたから、ちょっとだけ男に絆されてたのかも。  ま、でもそれも気の迷い。  とベッドから起き上がる。  ああ、腰がじんわり痛え。  まだなんか身体の中が変な感じがする。  それに、尻が。 「くっそヒリヒリする……散々突っ込みやがって……」  しんとした狭い室内、俺の独り言が響く。  時計を見ると、もうすぐ7時をまわろうかとしている時間だった。  やべえ。  今日も仕事だった。  と慌てて俺は浴室に飛び込んだ。  シャワーを浴びてさっぱりして出てくると。 「何でいるんだよ」  目の前のキッチンで、男が鼻歌を歌いながらお湯を沸かしていた。 「おおお素敵な格好でお出迎えありがとう! いやあ、この部屋食い物何もねえからさ、ちょっとそこまで買いに行ってきたんだ。汐音、せめて家で飯、作ろうぜ。って、どっち食う?」  ニコニコと掲げた手の先には、種類の違うカップ麺が二つ。 「……いらねえ。俺は朝はコーヒーしか飲まねえんだよ……」 「えええ! 一日持たねえよ?! ちゃんと食わないと!」 「カップ麺でかよ」 「だってここ材料ねえし、こんな朝早くからやってるスーパーねえんだもん!」  だもん、って。  酔っぱらってなくてもこの男はこんなんだったのか。  思わずはあっと溜め息が漏れる。 「つうか一晩の宿は提供してやったんだから、帰れよ」  頭をタオルでガシガシと拭きながらそう言うと、男はおもむろにカップ麺をシンクに置いて、真顔で向き直った。 「そのことなんだけど……」 「却下」  いやな予感しかしなくて聞く前にそう言うと、男が縋り付くように俺に抱き付いてきた。 「まず聞いて?! 聞く前に却下しないで?!」 「どうせろくな事言い出さねえだろ!」  振りほどこうにも男が力強いのはすでに昨日実証済みだ。  つうか腕苦しい! 「俺、今行くとこねえのよ! 昨日までいたとこ、追い出されちゃって! だから、少しの間、ここに置いてくれ!」  男の言葉に俺はしかめっ面マックスになった。 「そんな事知るか!」 「飯、作るから! ちゃんとご奉仕するから! 昨日晴れて愛し合った仲だろおおお!」 「愛し合う言うな! 俺は愛してねえしうぜえ!」  それに飯は食えねえし、秘密がバレたらやべえし!  こいつ何言い出すんだよ!  俺存続の危機だよ! 「無理だ! 見ろよこの部屋、男二人が住むには狭すぎんだろ! もっと金もってそうな独り暮らしの女捕まえろよ!」 「女はもうこりごりなんだよ……俺、汐音がいい。ちゃんと部屋の片隅に縮こまってるから! ホント少しの間でいいから! 頼むよおおお!」  仕事に行かねえといけねえギリッギリの時間まで粘られ、俺は男のあんまりのしつこさに、最後には頷かされてしまったのだった。  何だよあの押しの強さ。  昨日の熱が忘れられなかった、とかじゃねえからな!  絶対に!

ともだちにシェアしよう!