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血と洗礼 3
「今はァ、協力して立ち向かわないとダメでしょ? 真宮ちゃん。俺達仲間なんだから」
諭すように語り掛ければ、案の定彼は不機嫌そうに睨み付けてくる。
「仲間だと? 反吐が出るな。そろそろ黙れよ、テメエは」
「またそうやって噛み付くんだから。俺は真宮ちゃんの緊張を解してあげようとしてるだけなのに」
「誰が緊張してるだと」
「俺と二人きりになってからずっと気ィ張ってるじゃん。そんなに怖い? まあ、無理もないか」
暗に告げれば、彼の眼孔が更なる鋭さを放つ。
暫く見つめ合っていたが、薄闇の向こうから近付く気配を感じ、殆ど同時に視線を流す。
「あ、いたいた~!」
動向を窺えば、目が合った途端朗らかに手を振られ、小柄な人影が駆け寄ってくる。
「待たせちゃった? ごめんね」
手を合わせて謝られ、口を閉ざす真宮の傍らに立つと、見覚えのある彼に言葉を紡いでいく。
「いいや、全然。今来たところだから気にしないで」
笑顔で語り掛ければ、目の前に佇む人物が安堵したように微笑みを漏らす。
「そっか、ありがとう。今日はよろしくお願いします! あ、彼見ない顔だね!?」
挨拶を終えれば、興味は見慣れない人物へと移り、視線を注がれた真宮が困惑したような表情を浮かべる。
「へえ~、なかなかいい男だね。ねえ、お名前は?」
「……真宮だ」
「真宮さんて言うんだ~! 下のお名前は?」
「……凌司」
「かっこいいね~! 僕は雛姫 っていうんだよ! よろしくね!」
初対面とは思えない気安さで雛姫が近付き、ぎこちない彼の手を取って微笑む。
早速目をつけられたようだが、当人は気付いていないだろうし、控え目に愛想笑いを浮かべている。
話には聞いていたものの、いざ目の前にすると勢いに気圧され、やがて困り果てた真宮の視線が注がれるのを感じる。
「どうしたの? 困った顔して」
「どうすりゃいいんだよ……」
「もちろん、仲良くするんだよ」
微笑を浮かべれば彼は眉根を寄せ、どうしたらいいのか分からないような顔をしている。
「ところで今日の約束はどうなってるのかな」
たじろぐ真宮に助け船を出すつもりも無いが、話題をすり替えれば雛姫が視線を向けてくる。
「さっき着いたみたい。連絡きたからさ」
「そうなんだ。じゃあ、そろそろ向かった方がいいかな」
「そうだねえ、残念。もっと凌司くんとお喋りしたかったんだけどなあ」
「随分と彼の事が気に入ったんだね」
「うん! 好みだから!」
「あとでまたゆっくり話せるよ」
雛姫が嬉しそうに腕に抱き付くと、真宮がまた困惑したような表情を浮かべる。
目で訴えられるも、何だか可笑しくて放ってしまい、そうしている間にも雛姫からの質問責めに律儀に答えている。
何となく真宮の態度がぎこちないのは、此方を警戒しているからなのだろう。
「は~! いい男に挟まれて最高の気分! 仕事なんて放り出して遊びに行きた~い!」
雛姫が歩き出すと、自然と彼の両側に立ち、上機嫌な手に腕を取られて引き寄せられる。
「俺も。このまま手放すのは惜しいって思うよ」
「え? 何だか、前に会った時と雰囲気違うね?」
「それってどういう意味で? 良いほうに捉えていいのかな」
触れる手に指を絡めると、敏感に察知した雛姫から声が上がり、構わずに笑みを浮かべる。
「この気障野郎。そんな奴の言う事なんか真に受けんなよ。ろくな事になんねえからな」
雛姫の視線を浚っていると、それまで黙っていた真宮がたまらず声を上げ、冷たい一瞥を寄越される。
「真宮ちゃんてば嫉妬? 可愛いね」
「そんな安い挑発には乗らねえ。俺は雛姫に言ってんだよ」
「え!? 僕そういう乱暴な態度キュンときちゃう! もう一回呼んで!?」
「え……? いや……、悪い。つい……」
「え~! 何で謝るの~!? 僕の為に言ってくれたんでしょう!?」
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