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邂逅

僅かな時間ではあるが、互いに出方を窺いながら静寂へと身を委ね、今度は此方の番だと言わんばかりに間合いを詰めていく。 素早く動き、黒衣の青年の足を封じ込めようとローキックを繰り出し、狙う箇所を正確に捉える。 しかし当たる直前で青年の足が浮き、そのまま繰り出していた蹴りを器用に片足で受け止め、衣服を擦らせながら激しくぶつかり合う音が辺りへと響く。 先手を防がれ、互いに触れ合っていた足を素早く下ろし、此方が次の手を打つよりも先に素早く風を切り、刃のように鋭いハイキックを放ってくる。 いちいち考えてなどいられず、反射的に上体を少々仰け反らせながら命中を避け、右腕と左手を用いて重い一撃を受け止める。 僅かに体勢を崩し、けれども整えている暇などないままに拳が繰り出され、咄嗟に屈んで避けながら間近に迫り、向かい合う男の首に右腕を回して胸へと強く押し当てる。 身動きが取れないうちに右腕を掴み取り、半ば抱き合うような姿勢になりながら右足を上げて勢いよく払い、力任せに上体を傾けて相手を投げ飛ばそうとする。 黒衣の青年の身体が傾き、ふわりと両足を浮かせながら弧を描き、頭から地へと落下していく。 反撃の隙など与えず、力業で押し切れるかと思いきや、宙に浮いていた両足がぐんと地上へと迫り、投げるべく傾けていた身体が急に引き戻されてしまう。 投げるつもりが押し返され、虚空を強く蹴った彼の足が元いた地上に降り立つと、緩んだ腕の拘束から瞬時に逃れる。 腰を落としながら右腕を引っ張られ、左肩を掴まれて押し出されたことで前のめりによろけ、咄嗟に地を蹴って青年の身体を飛び越えるようにして地へと迫り、くるりと前転してすぐさま向き直る。 「くっ……!」 すでに目前へと迫り、未だ片膝を付いて体勢の整わない此方へと目掛け、彼は容赦のない蹴りを浴びせてくる。 重い打撃に腕を上げ、堅い守りで頭部へと狙い打たれるのを阻み、蹴ってきた足をぐいと掴んで引き寄せると、力を込めて思い切り掲げ上げて乱暴に離す。 引き摺り込まれた軸足は地を滑り、蹴りを叩き込んだ足を押し上げられてバランスを崩し、黒衣の青年は背中から倒れていく。 けれども彼は、そこから驚異的な身体能力で片手をついて両足を振り上げると、その体勢から延髄を狙って足を叩き込んでくる。 だが今回は、直前に不穏な気配を感じて場から動いており、すんでのところで非情なる一撃から逃れる。 型にはまらぬ動きで翻弄し、どんな体勢からでも反撃を繰り出してくる黒衣の青年にやりづらさを感じながらも、次なる攻撃に転じようと立ち上がりかける。 「うっ……!」 だが、一瞬目を離して腰を浮かせたところを狙われ、背後から回された腕に首をがっちりと拘束され、そのまま立たされて動きを封じ込められる。 まずいと思った頃には時すでに遅く、首に回された腕を解こうと手を伸ばすも力が入らず、それでもなんとか掴むも引き剥がせない。 僅かに身動ぐだけでも生地が擦れ、致命的な弱点とも言える首は過敏に反応を示し、力が吸い取られていくかのように弱体化してしまう。 背後で佇む者は何を思うのか、より首筋を晒すように顎を掴んできたかと思えば、弱い部分へ突如として舌を這わせて舐め上げてくる。 「くっ……、テメッ……、気色ワリィ真似しやがって……」 味わうようにゆっくりと反応を窺いながら何度も何度も舌を這わされて熱を持ち、ぎりと奥歯を噛み締めるも堪えきれない吐息が零れていく。 明らかに弱々しく、途切れながらもなんとか文句を連ねるも状況は変わらず、引き剥がそうと伸ばした左腕を掴まれていよいよどうにも出来なくなってくる。 その間にもねっとりと、特有のざらつきが首筋へと絡み付いては離れず、時おり軽く歯を立てられながらこれでもかという程にしつこく嬲られ、その度に情けない声が出てしまいそうになるのを必死に抑え込む。 「うっ……、は、なせっ……、テメェッ……。ん、くっ……ハァッ、あっ」 申し訳程度に顔を背けても意味は無く、丹念に首筋を犯されながらやがて耳朶を甘噛みし、熱を孕む舌を耳の穴へと差し入れては周囲を舐め、わざとらしく音を立てて吸い上げ、煽ってくる。 顎を掴んでいた手を下ろし、再びがっちりと首に腕を回して逃れられないようにしつつ、指先を弱い部分へと触れさせていやらしく上下に撫でてくる。 それだけでも耐え難く、懸命に背後にて立つ男の足を蹴るもびくともせず、たまらない刺激を与えられ続けて頭がおかしくなりそうであった。 「随分と必死だなァ……。遠慮しねえで声出せよ。感じてんだろ?」 甘ったるく熱を持ち始めていた吐息に気が付き、耳元へ寄せられていた唇から初めて言葉を紡がれるも、囁きに抗えずびくりと身体を震わせてしまう。 離れさせようと腕を掴んでいる手に力は無く、頬を上気させて熱っぽい吐息を漏らし、先程までの威勢の良さなど掻き消えて大人しくなっていく。 黒衣の青年は気を良くしたのか、存分に楽しみながら一方の手をするりと滑らせて脇腹に触れ、衣服を捲り上げて中へと強引に侵入してくる。 すでに熱を孕んでいる身体は僅かに触れられるだけでも反応を示し、腕を掴んでも力ない手では引き剥がすことも出来ず、胸の尖りを摘ままれて歯を食い縛る。 この野郎ッ……、なに考えてやがんだっ……。 どうしてこんなことになっているのか訳が分からず、最早添えているだけの手など単なる飾りでしかなく、指の腹でぐにぐにと乳首を捏ね回されて荒く息が漏れ、淫靡(いんび)な空気が互いをじわりと取り巻いていく。 「や、めろっ……。テメッ……、ぶ、ころすぞっ……んっ」

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