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邂逅※

「ここ……、弱いんだっけ」 そして告げられると同時に首筋へと指先が這い回り、見えないところから突然もたらされた刺激にいつにも増して身体が反応してしまい、情けない声を洩らしてしまいそうになる。 「うっ……、く」 「あの時、たまたまお前の首に触れた時からおかしいなあとは思ってたけど、やっぱ感じるんだ……? やらしい弱点持ってるね」 「はっ……、や、めろっ……」 「真宮ちゃんてば、撫でられただけでそんな声出すんだ。もっと気持ち良くさせてやろうか……?」 「あっ、はぁっ……、テ、メエッ……、んっ」 やめさせようともがくも、戒められている腕では抗えず、顔を背けても止まない愛撫にくすぐられ、微かに熱を持って吐息が洩らされていく。 凄んでも迫力は微塵もなく、やがて覆い被さってきた漸が首筋へと舌を這わせ始め、それだけでびくびくと身体が呼応していやらしい声が洩れ出てしまいそうになる。 時おり口付けをしながら舐め回し、特有の感触によりもたらされる刺激が、尚のこと敏感な身体へと仕立て上げていく。 「どうしてこんなに弱いの……?」 「はっ……、はぁ、う……。し、らねえよっ、そんなっ……、あっ」 「えろい声。その気にさせるの上手いね……」 「ちがうっ……、やめ……、や、めろっ……」 「やめてあげない。言っただろ……? お前のこと、グチャグチャにしてやりたいって……」 慈しむように首筋を撫で、背けている顔にも触れられて顎を掴み、向きを変えさせられたかと思えば唇を塞がれてしまい、驚く間もなく舌が口内へと侵入してくる。 「ん、んぅっ……、はぁっ、ん……」 拒みたい気持ちだけではどうにもならず、逃れたくても容易く舌を捕らわれて絡み合い、ただ受け入れることしか許されていない。 くちゅくちゅと音を立て、やがてすぐにも溢れる唾液が唇を伝い落ち、熱く激しい口付けに翻弄されて思考が奪われそうになる。 やんわりと首を絞めるように、いつしか両手を添えられながら尚も舌を絡ませており、これでもかという程に口内を蹂躙されて荒く息が乱れる。 一体何が起こっているのかついていけず、一帯が淫らで熟れた雰囲気を纏っていき、知らぬ間に鼻にかかった吐息を洩らしてしまいながら、首筋と共に口内を攻め落とされていく。 「はっ、はぁっ……、あっ……」 「真宮……」 「あっ……、や、めろって……、言ってんだろっ……、う、くっ……」 「言われてやめる奴なんていねえだろ。それに……、そんなやらしい声出して煽ってくるお前にも非はあるんじゃねえの? 自覚が無いのも罪だよなァ……」 ようやく解放されて忙しなく呼吸を繰り返し、どちらとも分からない唾液を拭えもしないまま、だらしなく唇から垂らして吐息を洩らす。 言ってやめてくれるような奴ではないと分かっていても、何もしないで身体を預けているなど到底堪えられず、無駄なこととは思いながらも制止の言葉を紡いでしまう。 髪を撫でられ、やめろと言わんばかりに顔を背けて嫌がり、その様を見下ろしている漸は楽しそうに笑みを浮かべている。 「んっ……」 「声抑えなくていいのに。堪えてるのもえろくてそそるけど、声出したほうが気持ちいいよ……? 我慢しなくていいんだよ、真宮」 「くっ……、うるせぇっ……。気安く呼ぶんじゃね、ん、はっ……」 「手のかかる奴だなァ。まだ恥ずかしいんだ……? もっといいことしてあげようか」 首筋へと触れ、抗う気持ちを弱まらせながら再び口付けをし、額や頬にもキスをしてくる。 恐ろしいくらいに優しい行いに、小さな一点が少しずつ広がって思考を蝕んでいき、いやだと思っているのに背筋はぞくぞくと快楽を覚え始めている。 「おい、やめろっ……。く、んっ……、なにやって、テメ……」 「喧嘩好きなだけあって、いい身体してるね。おまけに感じやすくて……、スゲェやらしい」 「くっ……、はあっ、は……」 衣服を捲り上げられ、程好く引き締まった肉体が露わになり、漸は相変わらず楽しそうに言葉を紡ぎながら脇腹を撫で、それだけでも身体があらぬ反応を示して自分が嫌になる。 蝕まれていく理性を引き止め、声を洩らさぬように押し殺す唇からは、熱を孕む息遣いが荒く続いており、堪えている姿が更なる煽りを生み出していることを知らないでいる。 もがいても振りほどけず、腕を動かしても拘束から逃れられず、じんわりと汗ばみ始めている肌へと顔を近付け、腹部からなぞるように舌を這わせていく。 「あっ……」 易々と捩じ伏せられ、悔しくて情けなくて憎いのにどうにもならなくて、今では乳首を舐められながらあられもなく声を上げて息を荒くしている。 「乳首弄られるの好きなの……?」 「ンなわけ、ねえだろっ……。気色ワリィ真似ばっかしてんじゃねえぞ、あ、うっ……」 「こんなに弄られて悦んでるのに……? スゲェコリコリして、固くなってるけど……?」 「あっ、はあ……、やっ、やめ」 「好きなんだろ……? いやらしいこと。認めたら楽になれるよ? なァ、真宮……」 「うっ……、ち、がう……、あっ、て、めぇっ……、た、だじゃ、おかねえっ……。あっ、ん……」 「怖い怖い、何されちゃうんだろう。怖いから今のうちに……、楽しんでおこうかな」 歯を食い縛っても堪えきれない喘ぎが洩れ、胸の尖りに舌を這わせられたり、軽く噛まれたりしながら熱を生み出していき、一方の突起は指で摘まんだり、捏ね回したりして弄ばれている。 これは何の拷問なのかと気が狂いそうで、まだ殴られたりしているほうがマシだと思ってしまう。 自分から洩らされているとは到底思えない、いや、思いたくもない声がだらしなく開かれる唇から零れていき、これ以上情けない姿を晒すくらいならいっそ殺してくれと考えてしまう。 どれだけ否定を繰り返しても、身体は徐々に裏切って更なる熱を欲し始め、漸に弄られて乳首が(なまめ)かしく濡れ光っている。 唾液に塗れて悦び、浅ましく尖りを固くしてねだり、目を背けたい現実が深度を増して広がっていく。 「こんなことされて悦んでるなんて、ご立派なヘッド様だよなァ……? こんなに淫乱でどうすんの? 触ってもねえのにココもうこんなになってんじゃねえか」 「う、あっ……、さわんなっ……」 「触って欲しいの間違いだろ? 満足に喋れもしねえのかよ。こんなにだらしなく(よだれ)垂らしておいて、よくそんなことが言えるよなァ?」 「あっ、う……、ん、んんっ! はあ、あっ、や、あっ……!」 「声出てきたね。いい子……」 荒々しく自身を引き出され、すでに散々なまでに熱をもたらされて欲を孕んでおり、唐突に漸の手により激しく刺激を与えられて声を漏らしてしまう。 今までの努力も空しく、容易く唇からいやらしい声が溢れ出して身動ぎ、いやだいやだと思いながらも明らかに快感として受け入れている喘ぎが鼓膜を震わせていく。 ぐじゅぐじゅと白濁が生み出されて絡み付き、途方もない快楽に抱かれて蕩けそうになり、けれども決して呑み込まれたくなくて苦しくて、辛くて辛くてそれでも気持ちが良くて、終わりのない戯れに翻弄されて気が変になりそうであった。

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