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邂逅※
おさなごをあやすかのように髪を撫でられ、拒んでいる余裕すらない唇からは矯声ばかりが溢れていき、欲深い蜜を垂れ流しながら漸の指をけがしている。
その手からもたらされる何ものをも拒みたいのに、泥沼の快楽に溺れかけている身体は言うことを聞いてくれず、先程よりも淫らな白濁を零し続けている。
頬を紅潮させ、熱を孕んだ吐息と共に甘やかな声を洩らし、うっすらと汗を滲ませながら譫言 のように拒絶を繰り返す。
かぶりを振っても絶え間無く、地獄の責苦から逃れることなど許されず、気が狂いそうな心地の中でそれでも弱々しくいやだと発しても、一度として聞き入れられることはなかった。
「真宮……、唇噛むな」
真っ白な敷布へと幾重にも皺を刻み、荒く息を洩らしながら髪を乱れさせ、せめて情けない声だけでも懸命に押し殺そうとする。
自分の唇から洩れ出ているだなんて到底信じられず、嫌であるはずなのに媚びるように発されていく声など受け入れられるはずもなく、無意識に唇を噛んで阻もうとする。
けれどもすぐに見つかってしまい、結局抑えきれない吐息を洩らしてしまいながらも、やめろとばかりに唇へと漸の指が触れてきてこじ開けられる。
「あっ……、はぁっ、う……」
唇を撫でられ、暴かれた唇からは情欲を孕んだ声が解き放たれ、なけなしの理性を蝕みながら容赦無く自らを陥れていく。
どうしてこのようなことを強いられているのかと怒りに震える一方で、快感に押し流されて身体を熱くしている自分が受け入れられなくて、恐ろしくすら思えて、がんじがらめの現状に対抗する手立ても見付からないまま奈落の底へと叩き落とされている。
最早どうしたらいいのか分からず、そのような混乱の中で唇へと滑らせている漸の指を、殆ど無意識に歯を立てて思いきり噛み付いてしまう。
自分を見失ってしまいそうな恐怖心からか、多少なりとも反撃を試みたかったからなのか、手負いの獣に噛まれた漸は暫しの時を黙り込んでいる。
「うっ……!」
そうして唐突に首を掴まれて声を洩らし、指が食い込んできて苦しさに低く呻く。
「しつけがなってねえなァ……。噛み付いたりしちゃダメだろ……?」
「くっ……、はぁっ、あ、うっ……」
突き放すように冷たく、けれども穏やかな物言いで咎められるも、裏腹に首筋へと容赦無く爪を立てられて苦しく、なす術もないままにひたすら耐え続ける。
「ほら……、真宮」
目隠しの奥で息苦しさに涙を浮かべ、憎い相手に弄ばれているしかない状況の中で、急に首筋から漸の手が離れて何事か紡がれる。
胸を上下させ、荒く呼吸を乱しながら咳き込んでいると、唇へと再び漸の指が触れてくる。
「舐めて……?」
うっすらと開かれている唇へと指を滑らせ、噛み付いて傷を負っているのであろう箇所に舌を這わせろと言う。
反応を楽しむかのように唇へと触れ、何か言いたそうにしていながらも紡げないでいる様を見下ろして、漸は美しい容貌に笑みを浮かべて楽しんでいる。
何故そんなことをしなければいけないのかと思うのは当然であり、彼が望んでいる言動なんてしたくもない。
それなのに抗うことすら許されず、ほらまた噛み付けよと煽るように口内へ指先を差し入れられ、屈辱的でありながらも他に許されている行為など初めからありはしなかった。
「はぁっ、あっ……、ん、んっ……」
遠慮がちに差し出された舌が、程無くして漸の指へと触れる。
じんわりと血の味が滲み、控えめに舌を這わせて舐め上げていき、見えないながらも丹念に愛撫を施していく。
唾液を含んでくちゅりと音を立て、次第に手離されていく思考の波間を漂いながら、命じられるがままに漸の指を丁寧に癒す。
何故、どうして自分はこんなことをしているのかと思っていても、視界を奪われた中での淫らな行為に段々と判断力が鈍っていき、鼓膜を揺さぶるいやらしい行いの数々に正常な思考が闇に閉ざされていく。
「いい子だね……。良く出来ました」
「んっ……、はぁ、ん、んっ……」
やがて漸の指が離れていき、小さく開かれた唇から舌を覗かせ、甘美な熱を纏いながら吐息を洩らしていると、顎に手を添えられてうっとりするような甘さをもって囁かれる。
次いで唇を塞がれ、もう何度目かも分からないような深い口付けを施され、くちゅくちゅと唾液を絡ませて淫らな行いに溺れ堕ちていく。
次第に抵抗を奪われていき、じわじわと懐柔されていきながら舌を触れ合わせ、情事の証が唇から溢れ出て伝い落ちている。
考えなければいけないことが山程あるはずなのに、思考する力すらも根こそぎ奪われようとしており、より一層淫猥 な雰囲気が一帯を充たしていく。
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