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邂逅※
言い終えると同時に、溢れて仕方がない白濁を指へと絡み付かせ、再度内部に突き入れては乱暴に掻き回していく。
「はぁっ、あっ……、んんっ」
最早感じ入る自分を隠しきれず、唇からは絶えず甘ったるい声が洩れ出ていき、もっともっととねだるように意図せず腰が揺らめき始める。
ちがう、ちがうと何度頭を振ろうとも、気持ちを置き去りにして残酷に裏切っていく身体は、与えられる愛撫を一心不乱に受け入れながら悶え悦び、更なる快感を欲しがって吐息を洩らしている。
自分は一体何をされているのだろうか、こんなこと断じて受け入れられないはずなのに、どうして考えられないような声を出しながら現状に甘んじて、脱け出せもせずに力なく身を預けているのであろう。
ちがう……、俺は、こんなこと……、嫌なはずだ……。なのに、なんで……。
「真宮……、気持ちいいなら素直に感じてろよ。此処には俺と、お前しかいないんだから」
「うっ……、だ、れがっ……、テメェ、なんかにっ……。あっ」
「強がってるのも疲れるだろう? そろそろ辛いんじゃない……? 怖がらなくていいんだよ……、真宮」
「う、るせぇっ……、あ、あぁっ、んっ……!」
「そっか。いじめられるほうが好きなんだっけな……、お前」
いやだ、こんな奴に堕ちたくないと必死に最後の砦を守りながらも、徐々に開かれていく現実に追い詰められ、いよいよ逃げ場を失っていく。
尚も指を入れられては掻き乱され、悦びの声を上げているかのように白濁を垂れ流し、いやらしい音を発しながら漸を受け入れてしまっている。
まるで毒のようにじわじわと侵食していき、すでに陥落している身体の次は思考を狙い、心までも蝕んでしまおうと彼は、優しく穏やかに言葉を掛けては少しずつ固めていた守りを剥がしていく。
まるで正しい行いであるかのように錯覚させ、何もおかしいことではないのだと思わせていき、抑えている声も、欲望も、快感も全て何もかも受け入れて身を委ねたらたまらなく気持ちがいい、堕ちろ、堕ちろ、堕ちてしまえと悪魔が頭の中で囁いてくる。
己に屈するのも我慢ならないが、憎き相手に平伏すなど死ぬほどに嫌であり、絶対に許されない。
けれども身体は欲望を孕み、いやだ、ちがう、やめろと何度胸の内で繰り返しても快感を欲しがっており、断崖に追い込まれて彼の手に堕ちる時が確実に近付いてきている。
葛藤は絶えず、こんな有り得ないことをされて腹立たしいのだけれど、一番許せないのは、それを欲しがって溺れ掛けている自分であった。
「もっと……、溺れさせてやろうか。二度と這い上がってこれないくらいに」
「あっ……」
何かとてつもなく嫌な気配を察するも、指を引き抜かれた身体は淫らな熱を纏っており、まだ足りないとばかりにひくついて誘っているかのようだ。
視界がぼやけ、思考に靄がかかり、駄目だと言い聞かせても唇からはか細い吐息が洩らされるだけで、抵抗する気力さえもいつしか根こそぎ奪われていた。
散々に可愛がられ、汗ばむ身体は淡い照明によって光を帯びており、胸の尖りも熟れたまま先程の愛撫を忘れられずにいる。
自分は一体何をしているのか、どうしてこんなところにいるのだ、何故打ち倒すべき相手を目前にして何も出来ずにいるのだ。
何度も何度も巡り、繰り返してきた疑問も最早機械的に脳内を過ぎていくだけであり、何の役にも立たなければ一層自分を惨めにしていくだけであった。
「んっ……! なに、して……、う、あぁっ……!」
なけなしの理性にしがみつき、ぼんやりと思考を巡らせていたところで時が止まるわけでもなく、異変を察して視線を向けるも内部へと押し進められていく存在に身体がぞくぞくと反応を示し、言葉にならない声が唇から滑り落ちていく。
つい先程まで感じていた指とは比べ物にならず、今まで経験したことのない感覚に動揺して思わず敷布をぎゅっと掴んでしまう。
少しずつ突き進められていくそれは、狂おしいほどの熱を孕みながら収まり、もういやだと思っているのに自身からは欲望の証が次へと滴り落ちている。
自分はおかしくなってしまったのか、それとも、元からおかしかったのだろうか。
「入っちゃった……。熱いね、真宮の中……」
「あっ……、はぁっ、い、やだっ……、もう……」
「言ったよな……? 逃げたくなっても、逃がしてなんてあげないって……」
「う、あっ、はぁっ、ん……」
崩壊していく、ガラガラと音を立てながら必死に守り続けてきた自我が、敵対者の手によって握り潰されていく。
それでも貪欲で恥を知らない身体は、漸を悦んで受け入れながら締め付け、幾度も打ち付けられてはぐちゅぐちゅとあられもない奏でを紡いでいる。
「今頃お前の可愛い飼い犬どもは、ヴェルフェの奴等と楽しく喧嘩してるんだろうなァ……」
「はぁ、あっ、ん、んっ……!」
「お前の身を案じながら、俺が仕向けた奴等とやり合ってるのかと思うと笑えるなァ……? で、お前は此処で何してるんだ? 鳴瀬の仇を目の前にして……、いつまでも遊んでいていいわけ?」
「あっ、う……、テ、メっ……、あっ、んんっ……!」
「どのツラ下げてチームに戻れるの……? みんなが一生懸命戦っている間、いやらしいことされて悦んでたなんて言える……? アイツらと肩を並べる資格ある……?」
「あっ……、や、めろっ……、あ、あぁっ……!」
泣きたいわけでもないのに、どうしてか目尻から涙が零れていき、見下ろしている漸の唇には笑みが浮かべられている。
優しく諭すように、けれども語り掛けられる内容は鋭利な刃そのものであり、罪悪感を次へと生み出させていきながら抉り、傷付けては弱らせ、なけなしの抵抗すら容赦無く奪い去っていく。
一思いに潰すと、そう告げたはずであるのに実際は、好きに弄ばれた挙げ句に快楽を見出だしてよがり、悦びの声を上げながら淫らでけがらわしい行為に溺れている。
誰も彼もが今頃、あちらこちらできっと漸の言うように交戦中であろうというのに、己と言えば無抵抗にただ組み敷かれている。
確かにこんなことをされて、いや、受け入れて悦んでいる自分が、一体どんな顔をして彼等に会えるというのだろう、かけがえのない輪の中に戻れるというのだろう。
やめろ……、聞きたくないっ……、黙れ、黙れ……!
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