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Tritoma※

「大事な貴方に……、無理強いはさせられません」 くちゅりと音を立て、白濁を絡み付かせながら指を差し入れ、やんわりと行き来を繰り返される。 優しげに語り掛けられ、くちくちと微かなる情事が耳に残り、焦れったいような感覚に翻弄されていく。 つい先程までとは打って変わり、乱暴に掻き回されていた一時が嘘であったかのように、今や繊細な動きで浅く弧を描いている。 気遣う言葉とは裏腹に、すでにどうしようもないくらい昂っている身体を知りながら、掠めるようなむず痒い愛撫へと唐突に切り替えられ、狂おしい程の熱を抱え込んで尚じわじわと蓄積させられていく。 行き場を失い、溜め込まれていくばかりの劣情は、解き放たれる瞬間を求めて獰猛なまでに肥大していき、邪魔でしかない理性を淵へとどんどん追い詰める。 あれだけ拒んでいたはずなのに、軽く触れるだけの行為に物足りなさを感じてしまい、そんなわけがないと必死に否定しても無駄な努力であり、穿たれる渇望に囚われて其処がひくひくと口を開いている。 「はぁっ、はっ……」 目蓋を伏せ、あまりにも控え目な快楽を懸命に拾い上げようと、無意識に腰が揺らめいて快感を得ようとする。 眉根を寄せ、だらしなく開かれている唇からは悩ましく吐息が零れ、身を焦がすような熱さを纏っている。 ほんのりと頬を染め、滲み出る汗は煌めき、これ以上無いほどに欲情しきった表情を浮かべて、遠慮がちに差し入れられるナキツの指を感じている。 求めていないはずなのに、容易に耐えられるはずなのに、どうして此の身は物足りなさを感じて熱っぽくくねり、奥まで貫かれる支配を望んでいるのだろう。 そのような浅ましい人間ではないと思っていたのに、一体いつから自分はこんなにも淫らな行為に溺れ、欲してしまうようになってしまったのだろう。 あの男が全てを狂わせたのだと思うと同時に、元から自分はいやらしい行いをされる時を待ち望んでいたのかと、考えるまでもないというのに確証のない不安が襲い掛かってくる。 「んっ……、はぁっ」 「どうしましたか……? 随分と苦しそうですね」 「あっ……、んっ」 「自分から擦り付けてしまうくらい、物足りないんですか……?」 「んっ……、あっ」 「気付いてますか? さっきから真宮さん、物欲しそうに腰が揺れてますよ」 「はっ、あ……、ちが……、そんな、わけ……」 「自分からいいところに誘い込もうと、俺の指に擦り寄っています。さっきはあんなに拒んでいたのに……、本当は欲しいんですか? 此処に……」 「うっ、あ……、ちが、あっ……」 「もっと奥まで……、挿れてあげましょうか」 「はぁっ、はっ……、あっ、ん」 次第に掻き回される指の動きが速くなり、深みを増して弄られていく快感に、はあと悦楽に沈みきった吐息を漏らしてしまう。 どれだけ拒んでみせようと、正直な自身からはとろとろと歓喜の蜜が溢れていき、更なる熱量を期待していやらしげに天を仰いでいる。 一度は達している事実が嘘のように、有り余る程の情欲を孕んでそそり立ち、だらだらと艶かしく欲深な汁を垂れ流している。 「どうしたいんですか……? 真宮さん」 「んっ、ん……」 「言えないならずっと、このままですよ」 「はぁっ、あっ……、い、やだっ……、んっ……」 「嫌なんですか? でも、挿れられるのは嫌なんですよね……?」 「あっ、あっ、はぁっ……、ば、か……、もう、やだっ、ナキツっ……」 またしても緩やかな動きに変わり、くちくちと力無く周囲から中へと指を突き入れ、浅いところで掠める程度に抜き差しをされる。 それだけではもう足りなくて、燻る熱を冷ます方法なんて限られていて、目を背けたくても最早彼以外にはどうすることも出来ないと分かっている。 本当はもう知っているくせに、容易く勘づいているはずなのにナキツは、余裕すら湛えているような笑みで視線を注いでいる。 恥ずかしくて、意地悪で、情けなくて、もうわけが分からなくて、子供のように辿々しく言葉を漏らして顔を背け、昂る感情に瞳が潤んでいく。 「欲しいですか……?」 弱まったかと思えば、再び勢いを増してぐちぐちと解されていき、延々と間髪入れずに攻められ続けておかしくなりそうであった。 悪魔の囁きにも思える台詞を紡がれ、熱に浮かされた思考は容易く眠りに堕ちていき、答えるかの如く彼を欲して下が疼く。 「あっ、はあっ、はっ……んんっ」 「真宮さん……。ほら、早く言葉で示してください」 「あっ……、んんっ! や、いやだっ……、い、えなっ……、できなっ……、あ、あぁっ」 「恥ずかしいんですか……? 此処をこんなにかき混ぜられて、気持ち良くして、見られてるのに、たったそれだけのことが言えないんですか……?」 「あっ、はあ、んんっ……! あっ、や……、そんなっ、かき混ぜな、で……、あっ、はあっ」 「困った人ですね……。それでいて嘘つきです。そんな悪い人には……、お仕置きが必要ですね」 「あっ、は、あ、あぁっ……」 ふるふると弱々しく頭を振り、欲しいというただ一言を面と向かって紡げずにいると、なんだかんだと言いながらもナキツが折れる。 しかしそれで安心とはいかず、次にはもう窺うことすらやめて熱き猛りがあてがわれ、ズズと内部を確かめながら押し入ってくる。 「あ、あぁっ、だ、めっ……、あぁっ……、はあ、んっ」 「それも嘘ですね……。何処がダメなんですか? こんなに蕩けた表情をして、まだ見え透いた嘘を連ねるんですか? 真宮さん」 「はぁっ、あ、んっ……! やっ、動いちゃ、だめっ……、あ、あぁっ」 「いい子になりましょうね、真宮さん……。もっと貴方を見せて下さい。乱れて下さい。ね……、真宮さん。怖がらないで……」 「あ、うっ……、んんっ! あっ、あぁ、ナキ、ツっ……、はぁ、んっ」 「気持ちいいですね、真宮さん……」 「あっ、あっ……、んっ! はぁっ、はっ……、いいっ……、い、い……、気持ちいっ……、あ、あぁっ……!」

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