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Digitalis※
ひしひしと視線を感じ、意識しないようにと心掛けるほどに、白銀の存在感が肥大化していく。
何が楽しいのか皆目見当もつかないが、求められているからには着手せねばならず、憤怒を孕みながらも大人しく自慰に耽る。
辿々しい手付きではあるが、いいところへと緩やかに触れていけば、このような状況でもじわじわと反応を示し始めてしまい、早く終わらせたいのだけれども自分が嫌になる。
さっさと達してしまいたいのだが、このような中で感じてしまうなんて有り得ず、絶対に許されないと相反する感情を渦巻かせておりながらも、従順なる手は密やかに疼きを生み出している。
「はぁ……」
徐々に熱を帯び、身体の変化には見て見ぬ振りを決め込んで、指を這わせて快感へとすり替えていく。
堪えても漏れてしまう声が嫌で、もう一方の手を口元へと添え、少しでも彼の耳に届かぬよう涙ぐましい努力をする。
仕方がないのだと言い聞かせ、見られているというのに感じていることから目を背け、何も考えないようにしながら自身を追い立てていく。
「ちゃんと自分のいいところ分かってるんだ。やらしいなァ……、いつもそうやって遊んでるんだね」
「ん……。するわけねえだろ、ばかやろ……」
「あれから何回した……? 気持ち良かっただろ? 俺との事を思い出して何度自分を慰めたの……?」
「はぁっ……、テメエとの、ことなんか……、早く忘れてえのに……。誰がそんなことするかよっ……」
「お前の身体が我慢出来るわけねえだろ。それだけじゃもう満足出来ないもんな……? 真宮ちゃんは」
「テメエの言ってることなんか一つも当てはまらね、んっ……!」
反論を試みたが、冷ややかな指輪がするりと自身を這っていき、やんわり掴まれて指で擦られてしまう。
やめさせようと触れても阻止出来ず、漏れていく声には更なる熱が宿り、言ってやりたいことがあっても言葉にならない。
「はぁっ、う……」
「真宮。そのまま続けながらキスしてよ」
「んっ……、なんで、俺がそんなこと……」
「たまには真宮ちゃんからしてほしいなあって……。ね……、いいだろ。気持ちのこもったキスしてみせてよ。噛み付いたりしたら怒っちゃうよ?」
「はぁ、く、そやろっ……」
いいようにされて腹が立つも、結局はどうする事も出来ずに従うしかなく、元より己からそうなる事態を呑んでしまっている。
自身を弄んでいた漸の手が退き、観念するしかないと言い聞かせても屈辱的な行為ばかりを強いられて受け入れきれず、それでもなんとか押し止めて白銀の胸ぐらを掴み上げる。
殴ってやりたいという衝動を押し殺し、真っ直ぐに見つめてくる双眸と視線を絡め、納得は出来なくても全てを呑み込んで距離を詰めていく。
「ん……」
ゆるゆると自身を愛で、形の良い唇へと自ら重ね合わせ、遠慮がちに舌を差し出していく。
一方の漸は何もせず、様子を楽しんでいるのかされるがままになっており、一切動こうとはしない。
その気にさせろとでも言いたげで、自慰に耽りながら口付けをするという痴態を晒しつつ、深く唇を重ねて舌をさ迷わせていく。
「んっ、ふぅ……」
舌を擦り付け、唾液が混ざり合って音を上げ、角度を変えながら奉仕する。
そうしている間にも、自身へと指を這わせて快楽を煽り、先端から感じている証が僅かに滲んでくる。
鼻にかかった吐息が漏れ、熱い口内で舌を蠢かせていると、呼応するように手が快感を求めて動き出す。
控えめな行為から、徐々に明確な意思を持って快感を貪るようになっていき、くちくちと上下させながらじんわりとした疼きが増している。
欲深な蜜がとろりと溢れ、指の腹を擦り付けてはむず痒い感覚を呼び起こし、嫌悪を抱いている相手を前に身体が火照っていく。
「んっ、はぁ……」
自慰を続けながら唇を重ねていると、これまで高みの見物を決め込んでいた漸に動きがあり、突如として激しく舌を絡ませてくる。
蕩けそうな熱と共に、混ざり合った唾液が淫猥な糸を引いていき、顎を伝っても終わらずに尚も唇を重ねられる。
堪えようとも叶わず喘ぎが漏れ、静観していたのが嘘のように口内を暴かれていき、淫らな熱を孕みながら深く繋がり合う。
「はぁ、ん……、んっ」
蕩けていく程に愛撫が増し、その気ではなかったはずなのにいつしか自身からは涎が垂れ、休むことなく手が行き来している。
「アレ……? どうしてこんなに溢れてんの? 気持ち良かった?」
「んっ……、はぁ、う」
「スゲェやらしい顔してる。なァ……、今何考えてるの? 教えてよ、真宮」
口付けから解放されても事は終わらず、抗い難い熱を帯びている自身を見下ろしてから、耳元で艶っぽく囁いてくる。
ピアスへと舌を這わされ、耳朶を甘く食みながら微かな刺激を寄越し、更なる熱をもたらさんと弄んでくる。
首筋を撫でられ、疼くような小さな刺激ばかりを寄せ集められ、一点へと求める欲望が次第に膨れ上がっていく。
「さっきよりも手付きがいやらしくなってる。見られながらえっちなことするの好きなんだ」
「はあっ、あ……、ちがっ」
「何が違うの……? 俺に見られながらイッちゃうんだろ? 手ェ全然止まんねえもんな。そんなに気持ちいいの……?」
「ん……、はぁ、あっ……。ち、がう……」
ふるふると弱々しく頭を振るも、感じ入る自身は尚も熱を孕み続け、先からは欲深な蜜を絶えず垂れ流している。
望んではいない、こんな事少しも求めていない。
分かっているはずなのに、それなのに自らの手により与えられる快楽から逃れられず、キスでとどめとばかりにとろかされたことによって、高ぶるままに自身を愛でる動きを止められないでいる。
頬は上気し、悩ましい声を漏らしては酔いしれ、開きっぱなしの唇からは飲み込みきれない唾液が伝い落ちていく。
理性にしがみつき、もう嫌だと思っているのに快楽を押し退けられず、ぐちぐちと淫らな音を自身から漏らし続けている。
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