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Digitalis※
「んっ……」
熱を感じ、咄嗟に沈み込んでいく指を引き抜こうとするも、漸は決して許してはくれない。
一旦は浮上しかけても、再度ひくついている其処へと指を呑み込ませていき、くちゅくちゅと浅く抜き差しを繰り返している。
漸の手により操られ、拒絶して当たり前である行為へと投げ出され、嫌なはずなのに唇からは甘ったるい吐息が漏れていく。
突き入れている中は暖かく、どうしてこんな事をしているのだろうかと脳裏を過っても、次第にとろかされていく理性が全てを連れて行ってしまう。
「手ェ止まってる。でも全然萎えてないね。物欲しそうにダラダラ涎溢してる。もっとやらしく触ってやれよ。此処で見ててやるから……」
「うっ……、はぁ、あっ……、いやだ……、こんな……」
「お前が言ったんだろ……? なんでも好きにして下さいって。約束一つも守れねえの? お前ってそういう奴なんだ」
「ち、が……、あっ、ちがう……、俺は……」
「せっかくお前を好きに出来るんだから、楽しまなくちゃ損だろ……? 難しく考えるなよ。酷いことなんてしないよ。ほら……、真宮。誰も責めたりしないから、もっとお前の可愛いところ俺に見せて……?」
突き放したかと思えば、すぐにも包み込むような優しさを与えられ、飴と鞭を巧みに使い分けながら牙城を崩していく。
視線から逃れることも出来ず、おずおずと再び左手を自身に添えていくと、即座に快感を貪ろうとする身体を止めきれない。
仕方がないと言い聞かせ、必要に迫られているからだと言い訳し、望んで行っている事ではないのだと釈明する。
くちくちと溢れる白濁が快感に塗れていても、自らの意思によるものではないと拒み、懸命に心を守りながらも少しずつ欲深な手付きに翻弄されていく。
自分の手とは思えないくらいにいやらしく蠢き、見られているにもかかわらず全く萎える気配もなく、寧ろより興奮を深めて先走りが滲んでいる。
顔を背け、汗を浮かべて頬を紅潮させ、自身どころか後ろまでもを弄らされているというのに、感じている声を隠しきれなくて唇を噛み締める。
「あ、また悪い癖出てる。唇噛むなって言っただろ。傷になるからやめろ」
堪えようと足掻いていると、聡い漸が視線を寄越してすぐにも気付き、膝をついて距離を詰めてくる。
程無くして見下ろされ、いつかのように唇へと指が触れてきて、溜め息混じりに声を掛けられる。
酷な戯れ事をやめてくれさえすれば、唇を噛み締めている必要も無くなるのだけれど、生憎ゆっくりと言葉を紡いでいる余裕なんてない。
「今日は噛み付くなよ。ほら、力抜け。真宮……」
「んぅっ……、はぁ、あっ……」
「泣きそうな顔してる。何が辛いの……?」
「あ、あぁっ……、はっ、やめ、あっ……、んっ……」
「気持ち良くておかしくなりそう……? ホントやらしいね。お前のこんな姿、誰にも見せられないね。ああでも……、お前は見られるほうが興奮するんだっけ」
か弱き抵抗も虚しく、噛み締めていた唇を開かされ、慈しむように額や頬へと口付けが降り注ぐ。
衰弱していく身も心をも蝕んでいき、得体の知れぬ優しさに縋りそうになるも押し退け、悪態もつけずに泥沼の快楽へと足を取られて沈んでいく。
感情の昂りは涙を溢れさせ、目尻から零れそうになっているところを指で掬われ、酷であるのに時おり優しげな言動を晒す青年の思惑が読み取れない。
散らばる意識は収拾がつかず、とうになんにも考えられなくなっており、淫らに呼吸を繰り返しては気付かぬうちに自慰へと耽る。
首筋を舐められ、それだけでより煽られていく身体を止められず、欲望の魔の手が足元からずるりと這い上がっても押し退けられず、いいようにされて腹が立つのに自分には何も出来ない。
「嫌がっていた割には、今は随分と気持ち良さそうに弄ってるんだな。ちゃんと自覚してる……? 言い逃れなんて何にも出来ない。お前がしてるんだよ」
「あっ……、俺じゃない……、んっ、う……」
「お前だよ、真宮。これがお前だ」
「ちがう……、俺は……、んっ……、こんな、こと……、したくなっ……、あっ」
「嘘つきだね。これだけ遊んでおいてまだそういう事言うんだ。したくもねえ事なら、お預けしても大丈夫だよな……?」
「はぁ、あっ……」
荒く息を吐き、一心不乱に快楽を貪っている醜き姿を受け入れられずにいると、含むような物言いの後に両の腕を掴まれる。
唐突に淫靡な行いを止められ、気持ちとは裏腹な甘ったるい声が漏れていき、まるで物足りないかのような甘さを含んでいて嫌になる。
「お前だけ気持ち良くなるなんてずるいよな。なァ、真宮……。そのお綺麗な口でしゃぶってよ」
「はぁ、は……、なに、言って……」
「簡単だろ……? あのガキの為ならなんでも出来るだろ。お前がそうまでして守ってやろうとしていること、伝えてあげなくていいの……?」
「んっ……」
「俺が代わりに教えてあげようか。アイツの為にお前が何をしたか」
「はぁっ、く……、やめろ……」
「出来るよな……? 真宮」
熱を持ちながらも達せられず、唐突にお預けを喰らって快楽を奪われ、欲望を解き放つことも出来ずに封じ込められて気が狂いそうになる。
何度も何度も、自分は一体何をしているのだと疑問が絶えず、全てを受け入れて此処に居るはずなのに呑み込みきれなくて、往生際が悪いと思ってもあまりにも酷な仕打ちに晒されて、泥沼にはまっていくばかりである。
腕を引かれて起こされ、息も絶え絶えに漸を睨んでも効果はなく、彼は笑みを浮かべながら視線を寄越している。
そうして彼が立ち上がり、移動してベッドの端へと腰掛け、じっと見つめながら次なる言動を楽しそうに待っている。
「真宮」
静かに名を紡がれ、早くしろと急かされているようで歯噛みし、それでも容易く行動には移せなくて葛藤が降り積もる。
だが、抗おうとするだけ無駄であり、決してしてはならないのだ。
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